水引の「素材としての魅力」に、「自分の感性」を加える

(写真=古厩志帆)

━━仲田さんの水引作品が、私のイメージしていたものとまったく違くて驚きました!

仲田慎吾さん(以下、仲田):水引というと、ご祝儀袋の飾りや鶴・亀などの細工をイメージしますよね。私の作品は「面」にたいして水引を貼りつける「貼水引」という独自の技法を用いていることが特徴です。

━━なんだか絵を見ているような感覚があります。

仲田:そうですね。コンセプトは「水引で“絵描く”」。もともと美術をやっていて、版画や絵画などさまざまな平面作品をつくることに意識がありました。その延長線にあったのが「水引」だったんです。

「RITUAL the crafts」 HPより

━━延長線というと……?

仲田:最初はキャンバスに線を引く感覚で、水引を一本いっぽん並べていただけでした。それがパターンや色の組み合わせによって綺麗な面になることに気づき、その名前のない「なにか」がだんだんと形になっていったんです。

そこからひとつの作品が誕生し、ジュエリーやオブジェ、アートなどへと、少しずつ発想が広がっていきました。

水引の原料は和紙。こより状にして、糊を塗って固めることで水引に(写真=古厩志帆)

━━なぜ水引に注目されたのですか?

仲田:私はもともと水引を素材のひとつとして見ていました。一本のヒモとしての美しさ、線としての美しさに魅力を感じていたんです。この水引が本来持つ美しさを活かしていきたい、というのが根源にありましたね。

━━こんなにたくさんの色があることにも驚きです!

仲田:白や赤、金色などが一般的ですが、実は水引にもいろんな色や質感があります。これだけ豊富な素材があったことも、組み合わせによって新しい表現ができるのではないか、と感じた要因のひとつでした。

イヤリングやネックレスなどのジュエリー作品(本人提供写真)
一輪挿しや動物などを象ったオブジェ作品(本人提供写真)
さまざまな幾何学模様で創られたアート作品(本人提供写真)

描くことの面白さを知り、美術の世界へ

━━飯田出身の仲田さんにとって、水引は昔から身近な存在だったのですか?

仲田:小学校の授業では地元の文化に触れる機会もあり、「飯田ではこれが特産品」という認識はありました。ただ、自分が住んでいた場所が水引産業が盛んな地域で、身近だったからこそ逆にそこまで興味はなかったんです。

でも当時から水引の素材としての美しさは感じていましたね。

(写真=古厩志帆)

━━どんな少年時代を送られてきたのですか?

仲田: やはり絵を描くことは好きでした。模写のように対象を似せて描くというよりも、わりと抽象的な絵をずっと描いていましたね。小・中学生の頃にそこに自分だけの楽しさを見出して「ずっと続けていきたいな」と思ったんです。

━━すごい。このころから作家になりたい夢があったのですね。

仲田:作家への夢というよりは「絵を描くことを続けていくにはどうすればいいかな」といった感じです。そこで美術の先生に聞いたところ、美術の学校があることを教えてもらいました。当時はそんな場所があることに驚きでしたね。

こうして、美術大学へ行ってみようというビジョンが生まれ、それに向かって進んで行きました。

仲田さんの絵画作品(写真=古厩志帆)

━━飯田に戻られたキッカケは?

仲田:東京の美術大学を卒業後、都内で創作活動をしていましたが、大きな作品や版画などの機械を必要とする表現に取り組みたかったんです。でも都会ではそういったことができる環境がなくて。飯田にある空き家をアトリエとして使おうと思ったことがキッカケでした。

━━水引作家としての活動もここから?

仲田:はい。水引のことは大学生の頃から「何かできないかな」とずっと頭の片隅にありましたが、作品として形になったのは飯田に戻ってからです。2016年、飯田を拠点に水引美術「RITUAL the crafts」を開業しました。

コロナ禍での新たな試み

━━ビジネスコンペプランに応募したのはどのような経緯があったのですか?

仲田:いままで地元であまり認知される活動をしてこなかったんです。ビジネスコンペプランを通じて、地域の人に知ってもらうキッカケにもなればと思って応募しました。

もちろん、少なからずコロナの影響も受けていました。今回のビジネスコンペプランのテーマが「乗り越えよう!新型コロナウイルス」だったので、ちょうどいいかなと。

━━入賞後、何か変化はありましたか?

仲田:コンペの奨励金は切削機の導入に使わせていただきました。それを使ってまた、新しいものを製作していきたいと考えています。

地元の新聞社には取り上げていただく機会もあり、地元での認知も少し高められたのかなと思っています。

新たに導入した切削機(写真=古厩志帆)

━━コンペでは東京の販路を拡大していくプランも提案されたそうですね。

仲田:さっそく1月に出店してみましたが、コロナ禍ということもあり、お客様が商業施設で買い物を楽しむ時期ではありませんでした。そこが合致しないと購入には結びつかないですね。今が通常の状態ではないので、感触が掴みにくいのも正直なところです。

━━別の方面でのアプローチも必要ということでしょうか。

仲田:はい。今は東京だけでなく、地方や県内、市内などでも販路を広げていけたらと考えています。模索しながら販路を広げていきたいです。

━━昨年12月にはオンラインショップをオープンされたとお聞きしました。

仲田:コロナの影響で実店舗での販売がしにくくなったことも要因にありますが、社会全体がオンライン販売の流れになってきたことが理由です。ECが一般的になってきたので、設備として必要だと思い導入しました。

少しずつ安定化に向けて広告を打つなど試みていきたいです。

━━インスタグラムも拝見させていただきました。SNSも積極的に活用されているのですか?

仲田:インスタグラムは2016年から5年近く続けていて、今では2750人の方にフォローしてもらっています。ここからお仕事や購入につながることもあり、ビジネスとして重要な存在となっているツールです。

━━作品と音楽が組み合わさったショートムービーが印象的です!

仲田:あれはにぎやかしです(笑)。インスタって目的意識が高まると、商品カタログみたいになってしまうな、と。みてくださっている方に別の楽しみを感じてもらいたいと思っています。

伝統工芸のあらたな可能性を探求する

━━作家として「作品を創ること」、ビジネスとして「作品を売ること」。仲田さんはこの二つを並行して取り組んでいらっしゃいますが、これについてどのように考えていますか?

仲田:常に難しさは感じています。「創る」と「売る」はまったく別もので、事業をスタートした当初はマーケティングの知識はほとんどありませんでした。

━━そういった中でも、百貨店での出店・セレクトショップでの販売など、着実に販路を広げられていらっしゃいますが、なにかコツがあったのですか?

仲田:いろんな人に意見をもらうことですかね。そして、それを気楽な気持ちで試してみるこが重要だと思っています。時には無茶苦茶なことも言われますけどね(笑)。

━━柔軟にいろんな意見を取り入れるのですね。

仲田:はい。作家として最高なものを創るのは最低限のこと。いろんな意見をもらい、取捨選択していくことで上手く発展していけると思っています。

ビジネスはある意味専門外なので、他の人の方がよっぽど知っている可能性が高いですよね。とりあえず聞いて試していくことは大事かなと。どんな話にも、聞いてみると自分が思いもつかない発見があるものです。

(写真=古厩志帆)

━━人からもらった意見で印象に残っていることはありますか?

仲田:最初はアクセサリーなどのジュエリーに展開させることは考えていなかったんです。それこそ人からもらった意見でした。

━━それは驚きです! では、当初は水引でオブジェやアートを作ろうと?

仲田:それすらも決まっていなくて、最初は形になった作品をどう見せていこうか考えていました。意見をもらって、はじめてカテゴリーが与えられたのがジュエリー。そこからオブジェやアートなどに展開して、うまく販売が回りはじめた感じです。

━━飯田市商工会議所では、作家さんが「売り方」に悩んで相談に来ることもあるそうです。自分がいいと思ったものが売れなかったりとか……。

仲田:自分はあまり悩まずに、別のアイデアを試したり、なるべく制作することに集中します。

それをどうやって届けるかを試行錯誤していきます。お客さんにうまく合致すればラッキーくらいに思って、とにかくいっぱいつくっていっぱい試して……。

━━悩まずにどんどんつくった方がいい、と?

仲田:そうですね。自分の場合はそういった形があっていて、楽しい部分だと思っています。

━━今後つくっていきたい作品のアイデアはありますか?

仲田:ブランドとしての商品にはなりますが、「日本」をモチーフにした水引作品を創りたいと考えています。

ビジネスコンペプランではひな人形を提案させてもらいました。そういった歳事記のものや、正月飾りやご祝儀袋などの水引の元々の使われ方に、自分の解釈を加えることで、まったく新しいものが生まれるかなと。

願望としてこれをシステム化して、自分以外の人でも創れるような体制にしたいと考えています。

━━今後どんな作品が登場していくのかとても楽しみです! 最後に、仲田さんにとって水引とは?

仲田:水引は飯田のひとつの代名詞。歴史でもあり文化でもあり、地域にとって大事なものです。

そして、とてもうつくしく、多くの可能性を秘めたものだと感じています。

水引の持っている文化的な魅力、素材としての魅力に自分の表現を組み合わせて、新しいものを創っていきたいです。

━━ありがとうございました。

(写真=古厩志帆)

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