前回の、「遠山ふじ糸伝承の会」の木下さんからご紹介を頂いたのは、きもの染色補正、クリーニング業等を行う「筒井和服」を営む筒井康之さんです。

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明治30年に創業された「筒井捺染」の三男として産まれた康之さん。

長男克政さんは家業である「筒井捺染」の4代目を継ぎ、次男の章男さんは京都で染め物卸を営み……と、三兄弟それぞれがきものの道でご商売を続けていらっしゃいます。

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「筒井捺染」と「筒井和服」があるのは、飯田市上郷の飯沼。

「飯田の商工会を作ったのは、染物屋と織物屋が最初。しかも、県内では長野市に次いで2番目の早さで創設されたんです。そのくらい、飯田のきもの産業は勢いや力を持っていたんですよ」

と、康之さん。ここ飯沼地区にも染物・織物・友禅といった職人さんや呉服屋など、着物に関わるたくさんの店や会社があったのだと言います。

近年は、需要の減少や安価な輸入品の影響もあり閉業する所も多いなか、筒井さん達は確かな技術で信頼を集め、今も商いを続けているのです。

「筒井和服」のきものクリーニングは、「染み抜き」「丸洗い」「洗い張り」そして染色補正と、多岐に渡る作業をすべて康之さん一人で行います。

着物のクリーニングをを行う業者の数は多くあっても、「染み抜き・染色補正まで行うのは全国で100人程しか居ない」のだとか。顧客は地域のほか県内全域、岐阜県の呉服屋さんから預かるものも多く、最近では浴衣のクリーニングも増えてきているそうです。

作業する筒井さん1

きものの種類や汚れ具合も様々。加えて作業する時の天候等も加味しながら、長年の経験と技術によって、美しく整えていきます。

作業する筒井さん2
作業する筒井さん3
作業する筒井さん4
作業道具

「同じ道具を揃えたからといって技術は真似できないから、何を写しても構わないよ」

そう話してくださった康之さん。

使う道具や薬品、水・熱・時間のかけ方といったすべてに判断が必要な、高い専門技術。なかでも仕上がりの状態を想像しながら色を重ねていく過程は、化学と美術の合わせ技であり、きものへの深い知識も欠かせません。

作業する筒井さん5

筒井和服では、きもののメンテナンス以外にも小物やオリジナルアイテムの販売、さらにどのように染めの工程が行われているのかが学べる「ハンカチ染めワークショップ」も飯田市内外で行っています。

「最近であればアニメをきっかけに着物の柄に興味を持ってくれる人もたくさん居る。そういった人達に対しても、間口を広くして和服やきものに近付いたり、職人の技術に触れる良い機会だと思って楽しんで欲しいんです。」

小物やオリジナルアイテムの販売
小物やオリジナルアイテムの販売

そして、お仕事以外の日々の楽しみをお聞きした時に教えてくださったのが三味線。

15年ほど前に始められた三味線、きっかけは公民館作業を共にした知人が先生をしていたご縁だったと言います。

15年ほど前に始められた三味線


民謡、童謡、歌謡曲と練習する曲は様々。

「夕暮れ時に三味線の音色がふわっと聞こえてくるなんて最高じゃん。」

また、祭りの際のお囃子では三味線で参加し、その際には、法被の下に本家で染めたきものを着ていかれるそうです!

飯田で産まれ、きものに関わる仕事をしていきたいと東京でクリーニングの技術を学び、この地で生活をする康之さん。

今思う、「飯田の良い所」を聞くと

「何か特別なものがある訳ではないけれど、必要なものはあるし温暖で暮らしやすい。若い人たちも、古い建物や田舎を求めて遊びにくるように、自然しかなくて何もないのが良い所。少し足を伸ばして都会に行けば何でもあるんだからね。」

そう話をしてくださいました。

飯田の風景1
飯田の風景2

なかなか自由に歩き回れない日々が続きますが、今の生活している場所のことをもう一度思い返すにはグッドタイミングな今。

飯田市で続いてきた「きもの文化」に触れてみる良い機会ではないでしょうか?


 ワークショップ情報

 7月18日には、藍の生葉染め体験が多目的スタジオ泰平にて行われます。

藍の生葉染め体験

こちらも是非。筒井さんの楽しいお話を聞きながら貴重な体験ができそうです!


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