
中小企業診断士の内山です。起業家や経営者の皆さんが訪れる「相談窓口」。みなさんどんな悩みを抱えているのでしょうか?
このコラムでは、中小企業診断士に寄せられる「よくあるお悩み相談」を10位から順番にご紹介しながら、一般的な対応方法についてもご紹介しています。
第4位は…「従業員が定着しない」です!
昨今の人手不足問題もあり、社員を雇用している経営者さんに限れば第1位といっても過言ではないお悩みです。
残された従業員への影響も大きい、「退職」の問題
「せっかく入社したのに3ヵ月で辞めちゃった」
「やっと仕事を覚えてくれたと思ったら退職したいと言われた」
・・・つらいですね。従業員の退職は経営者だけでなく、関わりのあった従業員にとってもつらいものです。業務レベルでも人手が減って困りますし、精神的にも前向きなものではありません。採用するためにお金をかけていたらなおさらです。
さらに加えて、最近では大手企業が「初任給30万円!」といった数字を提示しており、もはや小規模事業者では太刀打ちできない気持ちでいっぱいになってしまいます。
ところが、小規模事業者であっても社員が集まる会社、実は定着している会社というのは少なからずあります。私が日常で関わっている伊那谷エリアでも複数社あります。
これはいったいどういうことなのでしょう?
「内発的動機付け」にも目を向けてみよう
社員が集まる会社、定着している会社に共通して言えることは、社員が成長を感じられたりモチベーションを維持できる工夫をなにかしら実施しています。少し難しい言い方をすると、「内発的動機付け」に繋がる仕掛けをちゃんと整えています。
「内発的動機付け」って初めて聞く方もいらっしゃるかもしれません。動機付け≒モチベーション向上といった意味ですが、動機付けは外発的なものと内発的なもの2種類に分類できると言われています。一般的なものを次の表に整理します。

上の表の通り、内発的動機付けは満足をもたらす要因、外発的動機付けは不満をもたらす要因と言われています。多くの場合、「社員が定着しない!」という悩みについて話す時は右側の外発的動機付けの内容に目がいってしまうのですが、左側の内発的動機付けにいても目を向ける必要があります。
ちょっと想像してみてください。なぜ比較的給料が高く安定している大企業や公務員の職を辞して、中小企業やベンチャー企業に行く人が一定数いるのでしょうか?また昨今の人手不足の中、より高い給与を支給してくれる会社があるのに、なぜ転職をしないで働き続けてくれる人がいるのでしょうか?
勤務地や人間関係がよいという給与以外の外発的動機付けに関するポイントもありますし、多かれ少なかれ、やりがい、達成感、満足感といった内発的動機付けに関するポイントが影響していると考えられますよね?
つまり外発的動機付けと内発的動機付けの「両方が大切」であり、給与や待遇でものすごい好条件がだせないのならば、せめて内発的動機付けに関するポイントを押さえたアクションを起こすことが大切ということです。
ビジョンを語り、「スキルマップ」を作ってみる
「では具体的にどうすればいいの?」という手段については、個々の会社の事情によって様々にあります。採用→定着→育成→管理職への育成というステップの中でどこに問題があるのかといった点でも異なったりしますが、今回は比較的導入しやすく、簡単な人事評価などにも活用できるスキルマップという道具をご紹介します。

スキルマップとは上の図のように、縦軸に社員の名前(他の人の評価は見えないようにしてもOK)、横軸に社員に身に着けてもらいたいスキルを書いて、スキルのレベルを社員本人と上司で確認し合うというものです。
確認のレベルは、たとえば6段階評価にする場合は
レベル5:ほかの社員を指導できる
レベル4:ほかの社員をサポートできる
レベル3:一人で対応できる
レベル2:サポートがあれば対応できる
レベル1:やったことはある
レベル0:未経験
と言った具合で各項目を評価していくものです。
このスキルマップの良いところは、新入社員にとっては「どうすれば1人前なのか」「会社が自分に求めていることは何か」がある程度見える化されるところにあります。経営者の立場からは「こういうスキルを身に着けてほしい!」というメッセージなので、会社の「ビジョン」を語るきっかけにもなります。
もともとは社員の育成を推進するための道具であり、「成長を見える化する」という観点でも内発的動機付けに貢献する道具なのですが、社員と上司のコミュニケーションツールというポイントでも効果を発揮します。
最初に項目を揃えるところが少し手間ですが、それさえ乗り切れば、半年に1回や1年に1回の個別面談の場で見直し「半年前よりも今、今よりも半年後」と言った具合にレベルアップを感じられる道具となるはず。人材育成や採用について対策をする第一歩の道具としてお勧めすることが多いです。
いかがでしたでしょうか?次回のテーマは「情報発信したい!」です。いよいよトップ3にはいります。お楽しみに。
(文責)
みすゞ中小企業診断士事務所 内山拓巳
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