「地方紙」でその地域の文化を知る

こんにちは。ふくしま新聞店の“ふくたつ”こと福島達也です。

季節は晩秋。紅葉もそろそろ終わりですが、観光シーズンですね。皆さんは旅行をすることは好きですか? 旅行の楽しみはその土地の名物料理を食べること、観光名所を巡ることなどでしょうか。いずれの場合も「そこを訪れないと体験できない地域の文化に触れること」は旅行の大きな目的になると言えるでしょう。

今回、私が提案したいのは旅行先の土地の文化を知り、より一層旅行を有意義にするために、その地域で発行されている新聞、すなわち「地方紙」を買って読むことです。

「地方紙」とは特定の地方を販売対象とする新聞の総称で、例えば、信濃毎日新聞のように都道府県ごとに発行する「県紙」や、中日新聞のように東海・北陸地方を中心に発行する「ブロック紙」、南信州新聞のように特定の市町村を販売対象とする「地域紙」もあります。

なぜ私がこうした「地方紙」を読むことをおすすめするかというと、そこには地域住民がリアルに必要としている情報が、同じく地域の生活者である記者の視点で書かれているからです。旅行先の訪問者である観光客が、生活者の視点でその地域文化を理解することで、旅行は何倍も愉しめると思います。

私は、旅行先では、朝ちょっと早起きして近くのコンビニまで散歩し、その地域の新聞を買うことが習慣のようになっています。ホテルに帰ってコーヒーを飲みながら、地元紙を読む時間は私にとって、至福の時間です。 

しかし、様々な事情で旅行をする余裕がないという方もいらっしゃると思います。私もそうです。新聞販売店の休みは月に一日の休刊日のみで、遠方に旅行に行くことはなかなか叶いません。
そのような方におすすめなのが、旅行に行った気分になって、全国の地方紙のデジタル版のニュースを読むことです。

日本全国、例えば北海道には「北海道新聞」、東北地方には「河北新報」、中国地方には「中国新聞」、沖縄には「沖縄タイムス」、など各地方には様々な新聞社があります。

今は、地方の新聞社もデジタル版を販売しており、全国どこに住んでいても地方紙を読むことができます。無料で読めるニュースもあるので、その地域のリアルな生活や文化を知ることができます。

北海道新聞デジタルを購読して

じつは私は、多くの地方紙のなかでも「北海道新聞デジタル」を購読しています。
北海道新聞は、発行部数が約71万部で北海道全域をカバーする「ブロック紙」。実は私はまだ北海道に行ったことがないのですが、地元の飯田市とは全く違う北海道の人や自然、文化を知りたいと思ったことが購読のきっかけです。

購読してみると、北海道新聞デジタルのコンテンツの充実ぶりに驚きました。

とくにヒグマ出没に関するニュースが多いのはさすが北海道です。記者がヒグマを追う自治体職員に密着取材をして、その痕跡を追っていく様子は臨場感がありました。それもヒグマ出没に対する地元住民の危機感の表れでしょう。

また、北海道新聞は北海道庁や市町村の議会に対する取材をとても丁寧にしていて、時には問題に鋭く切り込んでいく姿勢が印象的でした。人口減少や地域経済の発展など、地域が抱える問題には、真摯に向かい合う姿勢にジャーナリストとしての矜持を感じます。

さらに特筆すべきは「北方領土問題」や「日ロ関係」の記事です。第2次世界大戦末期から続くこれらの問題に対して、日本とロシアの交渉の現状や、北方四島の今、そして故郷を追われた元島民の今を地域の報道機関として伝えています。北方領土問題は、地域に立脚した新聞社として全国や世界に発信するという使命感を感じました。

北海道新聞デジタルのコンテンツはもちろん、内容の記事だけではありません。連載コラムも充実していて、北海道日本ハムファイターズの新庄監督の発言を特集した連載「新庄語録」や、北海道の食にまつわるエピソードを特集した「北の食☆ストーリー」など楽しい記事もあります。

そして、意外なことに北海道新聞デジタルの記事で、飯田市の名前をみつける機会は少なくありません。北海道北見市と飯田市の「焼き肉の街」の連携や、札幌市の人形劇場こぐま座と「いいだ人形劇フェスタ」の関わり。また、新聞社として阿智村の「満蒙開拓平和記念館」を訪問して取材、飯田市の戦争体験者への聞き取りも行い、記事として掲載していました。地理的に遠いと思っていた北海道を身近に感じた記事でした。

北海道新聞デジタルを一年間購読して感じたこと。

それはやはり、「地方紙」を読む大切さです。考えてみると、世界は無数の「地元」でできていて、それぞれの地域の住民の生活や、文化・風習、考え方の違いがあります。他者の「地元」を知ることは、他者への「想像力」を養うと同時に、自分自身の人生観を豊かにしてくれると思うのです。


ぜひ、日本各地の地方紙のニュースに触れてみてください。地方紙のデジタル版にはメールサービス登録しておけば、毎日自動的に県外の地元ニュースが配信される便利な機能があります。また、日本各地の地方新聞社はポッドキャスト番組の制作配信もしているので、オリジナルコンテンツを聴くことから始めるのも良いと思います。

日本には各地に多くの地方新聞社が存在しています。ぜひ、ご自身に合った方法で、いろいろな新聞との出会いを楽しんでみてください。