東京は小さな田舎がひしめく街、
コミュニティは「ゆるやかなつながり」

湯澤英俊さん(以下、湯澤) 地方では、収益云々よりもまず、最初は人間関係、信頼関係あってこその場作りから。COM(M)PASS HOUSEは、その象徴的な例になっていましたね。

一方で、東京とか横浜とか都市部で場作りとかにぎわい作りが仕事になるっていうと、やはり発想が逆というか、収益を最初に作らなきゃいけないのかなとか、お金を生まないといけないのかなとか、次はそういうことを、はじまり商店街のお二人にお聞きしたいと思います。

熊谷賢輔さん(以下、熊谷) ありがとうございます。(柴田さんに)どこから話そうか。

柴田大輔さん(以下、柴田) まず、YADOKARIっていうウェブメディアはご存知ですか?

(会場挙手)

熊谷 多い! ありがたいですね。知らない方もいらっしゃるので一応お伝えしておくと、これは震災以降に始まったメディアで、DIYやオフグリッド、コミュニティビルドや2拠点など、住まい方を中心としたライフスタイルのなかで豊かな暮らし方、生き方の事例をご紹介しています。

柴田 ウェブから始まってるけど、建築のプロデュースをしたり、書籍もかなり出しているよね。

熊谷 ですね。そんなYADOKARIが、近年遊休地の活用だったり、にぎわい作りのようなことをやらせてもらっていて、そこから子会社という形で独立したのが「はじまり商店街」になります。

柴田 どんなことをしているんですか? ってよく聞かれるんですが、いわゆる「まちづくり」っていう考え方が一つあって、僕たちは「コミュニティ作ってください」とも言われるんですが、僕らがやっていることってたぶん、コミュニティになる前の「にぎわい」づくりなのかな、って。人が集まってくる、そのきっかけづくりをしているのが僕たちの会社です。

事業内容は、90%以上がイベントの企画運営ですね。

熊谷 そうですね、あとは、研修事業ですかね。

柴田 最近研修事業も増えてきましたね。あと、BETTARAの説明もしようか。BETTARA STAND 日本橋という場所に来たことある方、いますか?

(会場挙手)

熊谷 お! いますねえ。ありがとうございます。

柴田 この場所も、日本橋のある神社横の駐車場スペースを使って、新しいにぎわいを作ってほしいということが最初のオーダーでした。それに対して僕らのほうでは、「ただ建物じゃ面白くないよね」ということで、いわゆる(不動産ではなく)“動産”の、タイヤのついたトレーラーハウスを使って、完全屋外だけれど人が集える場をこしらえて、にぎわいづくりの場とさせてもらっていました。

BETARA STAND外観(現在は任期満了にてCLOSED) 
写真提供=はじまり商店街
写真=BETTARA STAND日本橋ホームページより

柴田 ただ、課題もありましたね。今に到達する前に。日本橋っていうのは古い街なので、割と新しい人を拒む気質があるんですよね。そこに僕らみたいな新しいメディアで、会社なんだかプロジェクトなんだかわかんない人たちが入って来て、しかも小屋? みたいな。まわりはパキッとしたビルばっかなのに。

熊谷 最初は、普通の飲食店としてやってみたんです。そうしたら、普通にお客さんは来てくれて「ありがとう」なんですけど、それ以上行けなかったんですよね。コミュニティというところまでは行きづらかった。

柴田 こりゃいかん、ということで、そこからイベントに振り切っていったんですが、結果的にやっぱりこっちの方がよかったよね。

株式会社はじまり商店街・柴田大輔さん 写真=古厩志帆

熊谷 全然こっちがよかったよね。

柴田 トークもやりましたし、マルシェもやりましたし、とにかくいろいろやったね。著名な方もお呼びしたけど、ゲストの方もわりとイベントはじめましてな方が多かったですよね。そういう人たちの背中を押しながら、いっしょにやっていました

人気だったのは食とか、お酒がからむイベント。逆に大失敗だったのが、結婚式の二次会をやったことで。9月ぐらいだったんですよ。旦那さんが外国の方で、近くも神社のいい雰囲気だしめっちゃ盛り上がって。司会の人も酔っ払っちゃってガンガン大声でマイクで喋りまくって。

熊谷 あれだ、DJもはじめちゃったんだ(笑)

柴田 そうだ、ちょっと音が大きいな……っていう時にDJやっちゃったんだ。で、次の日、僕たちももう大人なのにいわゆる大人に真剣に怒られるっていう、一番ダメな感じの展開でしたね(笑)。イベントがやれなくなりそうで、さすがにちょっとそれは、っていうことで、3週間ぐらいマイクなしでイベントやったよね。

熊谷 メガホン使ったね(笑)

柴田 そう、メガホン、全く意味ないんだけどね、どんだけ声だしてもすぐ近くにしか届いていないっていう。あれ、つらかったね。

写真=古厩志帆

柴田 そんなこともありましたが、全体としては、これからの暮らし方とか、ライフスタイルを考えるようなイベントをやりたいな、ということで続けていました。

で、結局BETARA STANDの強みってなんだったかって考えると、イベント中に次のイベントが決まっていく、っていう構造なんですね。イベントが終わって、参加者を含めてみなさんで何か話すので、そのなかで「これやりたいです」「じゃあ、いつにしましょう?」ってもう、日程を押さえちゃって、そうなったらもう、また来ようってなるし、イベントの数もどんどん増えていきました。

僕らは、人をつなぎつづけるというか、それをやり続けることがにぎわいづくりになっていった部分が大きかったですね。僕らの頭だけでイベントを考えるんじゃなく、こういうニーズがあるっていうことを直接受けて、かたちにしていく。だから僕ら以外にもアルバイトの人もいたし、イベントごとにジョインしてくれる人もいながら、大勢の人たちと場を作っていましたね。

熊谷 外部のコミュニティービルダーがいて、内部の僕らがいて。まあ、なんだかすごく、人はいたね。

柴田 いましたね。この先はこの人に任せる、みたいな。だから僕ら、コミュニティってなんだろう、ってよく聞かれたりもしますが、「ゆるやかなつながり」ぐらいでいいんだろうなって感じています。

BETTARA STANDも1年半なので時間としてはそれほど長くはやっていないんですが、思うのは地元も大事だけどよそ者の人たちに“入ってきていいんだよ”っていうことじゃないかなって。僕らももともと日本橋のよそ者ですし、知らなかったもんね。

熊谷 知らなかったね。東京って、大きな都市に見えるけど、あの広さで、狭く田舎がたくさんある、っていう感じですよね。

柴田 人口のいる田舎だよね。

熊谷 最近は、横浜をベースにやっているんですけど、横浜、370万人いるけど、田舎だよね。

柴田 田舎だよね、感覚値だけど情報遅いな、って感じるし。だからまずは、街を盛り上げるっていうときに、その場所にいる方々を盛り上げるのもいいんだけど、外の方が参加できる余白があったほうがいいんじゃないかなっていうのがあります。

 

新たな拠点「Tinys」は、
小さな暮らしを体験する移動式ホステル


はじまり商店街とは? の自己紹介からスタートし、BETTARA STAND日本橋での1年半について、失敗談も交えて(!)笑いが絶えないトークが進行。人と人とがゆるやかに入れ替わりながらつながる場の継続こそが、コミュニティの萌芽=にぎわいにつながっていくという手応えを得たお二人の経験談に、会場のみなさんも深くうなずきながら聞き入っていました。

さらにそこから話題は、二人が手がける新たな“場”である「Tinys Yokohama Hinodecho」へと移っていきます。


柴田 2018年4月に、Tinys(タイニーズ)という、新しい施設ができました。今度は、駐車場じゃなく、電車の高架下です。

熊谷 また難易度高そうな場所が、きましたよねー(笑)。

柴田 みなさん、高架下ってイメージ湧きます? この辺だとなんだろう。

湯澤 高速道路下、かな。

柴田 そうそう、高速の下、みたいな。えらいところでやってるなあ、っていう。

熊谷 この日ノ出町という、横浜駅から2駅目の場所の高架下にある、日本初の移動式ホステル、つまりゲストハウスを運営しています。

柴田 またトレーラーです。車輪付きの。移動式っていうのがキーですね。ちょっと、動画を見ていただきましょうか。

熊谷 これはオープニングのときで、450人ぐらい来ましたね。

柴田 人がいすぎて、トークに呼ばれてたんですけどトークする場所まで行けなかった。

熊谷 日ノ出町から黄金町あたりまでのエリアはもともと、治安の悪さが問題になっていた場所でした。それを、改善しようと始まったお話でもあって。

「バイバイ作戦※」、という取り組みによって環境はかなり改善して、アートバザールなども開かれてはいたんですが、それだけではなかなか滞在性もないので、我々YADOKARIがジョインさせていただいたわけです。

※バイバイ作戦・・・かつて売買春等の違法営業を行う約250の店舗が立ち並び、生活環境の悪化が深刻な問題となっていた初黄(はつこう)(初音(はつね)町・黄金(こがね)町)・日ノ出町地区で、平成17年1月より住民・警察・行政が協力して24時間体制のパトロール等を行ったり、違法店舗の摘発等を行なったもの。この取り組みにより違法営業店は姿を消し、治安は大きく改善した

写真2点=Tinysホームページより

柴田 この場所のコンセプトは「街で暮らす」ということ。昼はハンバーガー屋さんをやりながら、夜は先ほどお伝えしたタイニーハウス型のホステルが3棟あります。

写真=Tinysホームページより

柴田 先ほどチラッとお話したとおり、これらの建物も、BETTARAと同じくいわゆる「不動産」ではなく「動産」の扱いで、建築的な部分もうまいこと、車輌としてここに「駐車している」という扱いになっています。そうすることで、固定資産税もかからないですし、イニシャルコストをかなり抑えることができます。あとは、寒さの問題だけで。

熊谷 寒さ、またきたね?

柴田 僕らもまだ、1年目でここの冬を知らないんですが……こないだ、ちょっときたよね。

熊谷 寒かったね。

柴田 映画のイベントをやってたときに、お客さんからのひとことが「寒い」と。で、ほんとはその場で懇親会をやろうと思っていたんですが、近くの飲み屋でやりました(笑)。いま、早急にストーブを手配するように動いているんですが。

湯澤 ホステルの稼働は、どんな感じですか?

柴田 ファミリー層と女子会が多いですね。全棟女子会とか、ザラです。歩いていけるエリアにみなとみらいなどもあって、観光地に近いといえば近いんですよ。内装もかわいい、と好評ですね。

熊谷 そもそもここは、「泊まる」っていうよりも、小さな暮らしを体験するっていうコンセプトだもんね。

柴田 そう、実際ここは、14平米くらいしかないスペースなので、仲良し同士だと、めっちゃ楽しい。

熊谷 仲良し同士じゃないと……。

柴田 ちょっと気まずい(笑)。でもそこは、うまいことコミュニケーション取っていただいてね。実際寝てみると、居心地は悪くないです。ぜひ一度いらしてみてください。

そんな感じでTinysがあって、僕たちの領域でいうと相変わらず、大体月20本くらいのペースでイベントをやらせていただいています。これまでやってきたイベントは、全部にストーリーがあるんですが……気になるのありますか? 高橋さんどうですか?

写真=古厩志帆

高橋歩さん(以下、高橋) 11月の終わりのほうの、シェアハウスのイベントが気になってました。

柴田 「僕らの『暮らし』は自分でつくる ~自然とつながる二拠点生活・生かし合うシェアハウス・タイニーハウスの実践から~」ですね。これは、最近卒業して社会人になった方で、熱海で自分の物件を借りてシェアハウスをやっている人がいるんですよ。で、仲間を集めたいということでこのイベントになりましたね。空き家問題も加速しているし、同じような考え方の人も多いなと思ってイベントになりましたね。

写真=Tinys Yokohama Hinodecho Facebookページより

高橋 見たときに、自分も似たような立場なのですごく、気になっていました。

柴田 あとはこの間は、「全国のあたらしい仕事図鑑~『自分ごと』として地域に関わる姿勢が街を作る~」っていうのがあって。みなさん、ソトコトって知っていますか?

(会場の多くが挙手)

柴田 このソトコトの、「あたらしい仕事図鑑」という号に、僕たちが載っているんですが、これは僕たちみたいなコミュニティービルダーとか、熱燗DJとか、変わった肩書きの人を紹介したイベントですね。

にぎわいとは熱狂の継続。
“情報太り”の時代にこそ、
リアルなコミュニケーション力が問われる

柴田 で、なんでこんな風に僕らが「コミュニティビルダー」としてイベントをやっているかということなんですが。SNSとかオンラインでどんどん繋がりはできるし、情報も得られると思うんですけど、そうやってるなかで感じるのはむしろ「コミュニケーション能力下がってきてねえかな?」ということで。それこそ山暮らしカンパニーみたいな実践はいいと思うんですけど、実践されていないことが多いと思うんです。「情報太り」みたいな状態になってしまって

そんななかで、イベントはオフラインでのやりとりでコミュニケーション力は上がると思うんです。自動運転とかが当たり前に出てくる時代だからこそ、コミュニケーションの力が必要となる。だから僕らは、イベントそのものに加えてその場からはじまるつながりを大事にしているんです。

熊谷 テクノロジーが発展すればするほど、こういう「場」が勝ちだよね、っていう。「0次情報」っていうんですかね、個人がthink考えることじゃなく、feelするを感じる時代が確実にくると思うんです。

柴田 ちょっとそれあやしいやつみたいですけどね、「thinkじゃなくfeelなんです」とか(笑)

熊谷 まあ、怪しいやつっぽいけど(笑)、まさに今日みたいな感じですよ。

柴田 コミュニティービルダーって、どんな職種なんですか、って言われてて、僕らはイベントできっかけを作っていると思っているんですが個人の方も、企業の方も同じく、ストーリーだと思うんです。ストーリーを、僕らのほうで編集していく。僕らはモノは持っていないけれど、ヒト・モノ・コトをつなぎ合わせる、そんなお仕事なんじゃないかなと思っています。

最初に戻りますがコミュニティづくりの前に、まずにぎわいづくりが大事で。その点でいうと、「場」というのがやりたいこと、自己実現の場になっていくことだったり、多様な人が参加できることが大切。

でも……、僕らいろんなところで活動させてもらっていますけど、こういう仕事ってお金化されるまでにすごく、時間がかかるんですよ。

熊谷 マジで時間かかるよね。

柴田 そう。点から面にしていくためにはこう、最初は歯をくいしばって……というよりは、正直につながっていく、という感じだよね。やり続けて。

熊谷 やり続ける、ということが前提というか。

柴田 続けていくことで、はじめて面になるんだろうなと思ってやっています。さっき、(中村)瑞季さんもおっしゃっていましたけど、僕たちも1年後どんな景色が見えてるのか、わかんないですよね。

熊谷 思ってた景色と違うこと、多いですしね。

高橋 コンパスハウスも、3月オープンなので、まだ全然、という感じです。

柴田 これからですよね。たぶんいま蓄積しているところで、1年ぐらいやってようやく「まあ、こうだったかな」みたいな。おそらく、2、3年やってこうなってきたね、じゃあ5年後はこうしていきたいね、ぐらいの感じなのかなという気はしていますね。

でも、どんな場でもそうだと思うんだけれど熱狂の継続が必要だと思ってまして。

熊谷 これ、最近柴田くん言い続けてるよね。

柴田 情熱ですね。「はじまり商店街」という会社名にさせてもらっていますけど、やっぱりはじまりを始める? 第一歩を踏み出すことが大事なので、それをどういう風に設計していくかが大事、という話をよくしています。あとはコミュニティの資源って、yamairoさんみたいなゲストハウスさんも間違いなく資源ですし、ヒトモノコトいろいろあると。そのなかでもたぶん、一番気付きやすいのは人、なんですよね。だから、人と話すこと。そこが始まりかなあって。アウトプットし続けることで、やりたいことにつながっていって、それがだんだん熱狂になって、つながりになっていくんじゃないかと思いますね。

熊谷 柴田くんが言ってたとおり、インプットするだけじゃなく、アウトプットした時に感じた「0次情報」がとても重要なんですよね。それを、彼は高速回転でやってるので常に成長し続けてるイメージ、なんですよね。

柴田 あ、成長しました僕?(笑)

熊谷 うん、だいぶ成長した(笑)。って、上から目線になっちゃいましたけど、最初すごかったですからね、もうこんな(睨みをきかせた)感じで(笑)。会ったとき、怒りをモチベーションにしてましたからね。

柴田 まあ、暗い話じゃないんですけど、ずっと社会に疑問を感じてて……

熊谷 はい、こんな感じだったんですよ(笑)

柴田 でも、僕もイベントやってきて、やっぱ個人の力でイベントは作れないなって思ったときに、やっぱり人の話を聞くしかないって、脳が自然と切り替わっていって、やっと気づきました。人に優しくなろうと思って(笑)。反省しながら、感謝です。

湯澤 歩くんもソトコトに出てたじゃない?※ 「人が集まっている場所」として取材された山暮らしカンパニーとしては、どう表現する? コンパスハウスはどういう場ですか?

※2018年5月号特集「人が集まっている場所のつくり方」

高橋 コンパスハウスも、「コミュニティを作らなきゃ」みたいな時期があったんですけど、いろんな人の話を聞いて、コミュニティを作りたくて作ったというより、あそこはまず、若者がいないんですよね。外を歩いていても昼間も人がいなかったり、おじいちゃんおばあちゃんばっかりだったり。でも、ふと気づいたら、僕たち自身が若者なんですよ。

山暮らしカンパニー・高橋歩さん 写真=古厩志帆

柴田 たしかにそうだね(笑)。

高橋 ふと、そのことに気づいた瞬間があって。

だから、頑張って友達を呼んできたり、どうやったら人がくるんだろう、イベントで疲弊しちゃっても仕方ないし……って考えていたときに、まずはもっと自分たちがワクワクして、まさにお二人がおっしゃるような熱狂とか情熱っていう状態に自分たち自身がなったら、きっと人は自然と集まってくるな、って思ったんです。

結果、実際に今、平日にも人が来てくれるようになったし、若者が大学から帰って来たり帰省したら行きたい、っていう場所になってきて、ゆるやかなつながりが生まれているのかな、という感じです。

湯澤 そうだよね、あの場所はたぶん(単発的な)イベントという存在じゃないな、っていうのが感覚としてあって。僕サッカーやってたんですが、サッカーの練習や試合中によく、スペースつくれ、って言いますよね

熊谷 言いますね。

湯澤 スペースって、そこになにかあるわけじゃないじゃないですか。でもスペースって、作れば何かそこに可能性とかチャンスが生まれる、そんな感じなんだなって思って聞いていました。これは結論じゃなくて感想ですけど、お二人についても、もちろんイベンターとしての姿はありますが、そのノウハウ以上に動き続けることで仕事の仕組みというか可能性、スペースを作っているんじゃないかっていう感じがしましたね。

湯澤英俊さん 写真=古厩志帆

熊谷 うん、実際営業してないもんね。

柴田 していないね。強いて言えば、イベントが営業なのかな、っていう。

熊谷 僕らのなかで最近生まれた「スペース」でいうと、LIFULL HOME’Sさんってご存知ですか?  LIFULL HOME’Sさんの持っている「LIFULL Fab」っていうものづくりのスペースがあって、そこでも新しい住まい方の提案をさせてもらったり、あとは人形町に「まちのてらこや(https://www.terako-ya.jp/)」っていう保育園をイベントスペースとして使わせてもらったり、結構増えてきていますね。

こうした動きの中で作り出そうとしている概念的なものは、「はじまり商店街」が真ん中にあって、その周りにコミュニティスペース、ワーキングスペース、保育園、工房とか、いろんな場が「商店街」のように、距離は遠いけどできあがっているんですね。我々はそこで、関係人口を作りたいな、って。

写真=古厩志帆

熊谷 例えば今日、みなさんここにいらして、こうしてみんなで出会って、また次に東京に来るときに、あるコミュニティスペースで気になるイベントがあったら、ちょっと行ってみようかな、って思いません? そうなったときにはじめて、我々「はじまり商店街」の別の商店に行った、ということになる。そう考えていくと、ふつうの商店街と考え方はいっしょで、それがただ、距離をこえたものなのかどうか、っていうことですよね。

先ほど彼も言った「自動運転」なんかが広まることで、これからもっともっと移動する世の中になりますよね。逆にいうと移動しなければ、自分の価値に出会えない世の中になるっていうことを僕らは想定しています。人が確実に減少して箱が増えているという時代のなかで、人と箱をつなぐミドルウェアを作る人材がこれから求められる。それがコミュニティビルダーだよね、と。それをいま、イベントというツールを使ってやっている、ということなんです。

湯澤 じゃあここで、懇親会の前に会場から質問をいただきましょうか。

会場 今まさにお二人がやられていることを、村でやり始めているんですが、イベントを仕掛けていくなかでの作り方というか、例えばタイトルの決め方などでこだわりがあれば教えていただきたいです。

あとはよく、集客と言われるんですけど、ぼくは集客ありきではイベントを立てたくなくて。聞きたい人がいる、やって欲しい人がいるというなかで作っている段階です。そのあたりについて、お二人のご意見を聞かせていただけたらと思います。

熊谷 まず、集客ということで話をさせていただくと、おっしゃるとおりいったん考えない方がいいな、っていうのはありますね。もちろん、考えるんですが優先順位の一番はそこじゃないかな、って。人数は10人~20人、っていうのは最初に僕らも決めました。というのも、やっていくなかで、これくらいの人数なら、来られたみなさんがほぼほぼ満足して、結果そのあとにつながるかな、という人数がそれくらいなので。

100とか50とかをたまにやるんじゃなく、10~20人を確実に集めてそれをめっちゃやる、みたいなほうがきっと、多くの人を幸せにするんじゃないのかな、って。

柴田 つながりも濃くなるからね。

熊谷 そういう感覚ありますね。

柴田 タイトルについてですけど、じつは僕は個人でイベントを企画するということはほぼなくて、やるゲストがいらっしゃるので、ゲストさんに「メッセージ性はなんですか」ということをいつもお聞きするんですね。キーワードください、みたいな。それをいただいたなかで僕はタイトルを作っていくので、むしろイベントをやるときにむしろ、一人でやらないことがコツかもしれないですね。

あとは、過去っぽいより未来っぽいほうがいいかな、っていうのはありますね。未来に向かうようなタイトルのほうが。

熊谷 僕らだって、来ないイベントはマジ来ないときあるよね。

柴田 うん。ランニングのやつとか。

熊谷 あったねえ。「ランニングして鍋する」、っていうのはすごい人が来たんだけど、「鍋してランニングを語る」っていうのは人来ないとか。

柴田 だから、ランニングはしたいんだよね、ランニングする人は(笑)。語るもんじゃないと。

熊谷 僕らの読み間違いだったよね。(笑)

柴田 あとは、「稼げないライターの集まり」っていうのを一回やったけど、Facebookページの「関心あり」はいっぱいつくのに人は全然参加はつかない、っていう。認めたくないんですよね、そりゃそうですよね(笑)。

熊谷 興味あるけど人来ない、っていうパターンだね。

柴田 だからタイトルも、あまり攻めすぎるとダメなんですけど、カテゴリー飲み会とか、カテゴリー鍋会みたいなものはどこの地域でもできると思うんです。

熊谷 いきなり遠くからゲストを呼んで、というよりは、町の人で何かやりたい人とつながることが大事なんじゃないかと思いますよね。たとえば星座が好きとか、パーソナルなものでいいと思うんです。そういう方達がアウトプットする場を作り続ければ。やってることはどこでもいっしょなんです。

湯澤 他にはどなたか、いらっしゃいますか?

会場 先ほどコミュニケーション力の話なんですが、参加した方との距離感が難しいというか、イベントをやったときにどう参加者に近づいていくかを教えてください。コミュニケーション力に関わって来ると思うので。

柴田 これに関してはまず、僕らがコミュニケーションモンスターの可能性はいったん置いておいて(笑)。僕らたぶん、人に会いすぎてるので、人と話さないと気持ち悪いくらいになってるので、そこは置いておいて、どうだろうね。イベントの設計でいうと、イベント時間より懇親会時間を長く設定しているというのはあるよね。

熊谷 まあ、イベントをするとかしないとかじゃなく、多様性ですよね。多様性ってなんだろうっていうと、相手を認めるっていうそれをやっていれば。まず相手を認める、で、気になることがあったら質問する。基本的にはヒアリングですよね。

柴田 あと、自分が作りたいサービスって意外とあんまり、ないんですよね。それ以上に人から聞いて受け取る課題の方が多いっていうか。だからいまはまず、世の中の課題を解決したいなっていう。それが、たぶん僕たちがやるイベントの量にも反映されていると思います。

湯澤 お二人、ありがとうございました。改めて、はじまり商店街の熊谷さん、柴田さん、それと休日に来てくれた高橋さんに拍手をお願いします。

(会場拍手)

[おまけ]

トークを終えて、「ハジメマシテ、飯田」からイベント運営の素朴な疑問質問を投げかけてみました!

Q.早すぎても忘れられてしまうし、遅すぎても予定が立たない。イベント告知のタイミングをいつも悩むのですが、いつに設定していますか?

熊谷 僕たちも毎回確実にいつ、というルールではないんですが、遅くとも1ヶ月前に、というイメージで進めていますね。

Q.イベントの参加費が現在、1000円から1500円程度と手頃な金額に設定されていると思うんですが、収益性ということについてはいかがですか?

熊谷 今までの蓄積でイベントをできる「場」は増えてきているので、金額はこれでよくて、あとはこれから僕らみたいなコミュニティビルダーの「数」を増やしていくことで収益につなげていきたいと考えています。

柴田 完全な赤字はダメですけれど、僕らはまず関係人口を増やすことを優先してやっていて、イベントそのものの収益は一旦横に置いている部分はありますね。

Q.イベント告知の際、広告は打ちますか?

熊谷 基本は打たないです。やるとしてもFacebook広告を1000円までと決めています。

Q.平日、週末、3連休、あとは昼夜、いつイベントをやるのが適切という印象はありますか?

熊谷 それは本当に、イベントのターゲットにもよりますよね。内容によって判断でいいと思います。

Q.先ほど「イベント疲れ」という言葉も出ましたが、まさに地方でイベントというと、遠くから著名な人を呼んですごく疲れてお金もかかったけどそれほど人が来なくて……。ということが多いように感じていたので、「まずは地域の人にスポットを当てる小さなイベントを重ねて場を作る」というお話が目からウロコでした。

柴田 地元7割、よそ者3割、くらいの感覚でいけたらいいんじゃないでしょうかね。そうじゃないと、いつまでもお金が外に流れていくばかりなので。たまにはどんと大きなイベントにするのもいいと思いますが、まずは集まりやすい場を作っていくほうが大切な気がしています。

Q.コアなメンバーも、3割でも外からの人もいることが場には大事というお話ですね。

熊谷 そう、場のためには、いつも会える人を一人、作るのも大事ですよね。ここにいくと、あの人に会える、っていう。そうすると、場に対する常連さんもできて、あとはイベントごとに新しい人が来るっていう風になると、にぎわってくると思います。

―またぜひ飯田にいらしてください、ありがとうございました!


プロフィール

柴田 大輔

株式会社はじまり商店街 共同代表

1988年秋田県秋田市出身。幼少の頃から家族・学校・社会のコミュニティに疑問を抱く。 鎌倉を拠点にシェアハウスやゲストハウスの運営していたほか、カフェ・バル・家具屋に関わりながら街のコミュニティづくりを行う。 2017年4月BETTARA STAND日本橋のコミュニティービルダーになり、映画上映・まちづくり・地域と連携した飲食のイベントなど年間200本以上を運営・企画。 2018年5月には新たに誕生したTinys Yokohama Hinodecho のコミュニティビルダーとして、引き続き多様なイベントの企画・運営を行っている。 2018年10月から鎌倉のHOUSE YUIGAHAMAでも「コミュニティビルド」をテーマにLABメンバーとして研究中。

 

熊谷 賢輔

株式会社はじまり商店街 共同代表

1984年神奈川県横浜市出身。2013年 商社で6年間勤務を退社し、自転車で日本一周を実行。その後、アラスカ→カナダ→アメリカ西海岸→メキシコ110,000km を11ヶ月かけて自転車で走破。 モバイルな生活を送りながら「旅x仕事」を実践する。帰国後はYADOKARI株式会社代表と共にBETTARA STAND 日本橋プロジェクトに参画。2018年8月よりはじまり商店街(YADOKARI子会社)共同代表に。多様性・共有・コミュニティをテーマに、誰もが志へのキッカケを踏み出せる「はじまりを、はじめる」場作りを創造する。
他にも、ドラニストとして藤子・F・不二雄先生の哲学・思想を、イベント通して勝手に広報活動したり、日本のものづくりを応援するべく、デザイナーNorikim氏と「ボルトとナット」を展開したりと、コミュニティ作りの実践者としても活動中。

 

高橋歩

1993年生まれ。長野県飯田市出身。山暮らしカンパニー発起人。高校の友人に誘われたことがきっかけで遠山郷に通い始める。2016年、Uターンする友人とともに山暮らしカンパニーを立ち上げる。東京、遠山郷でのイベントを多数開催し、遠山郷の魅力を広く発信している。2016年3月には、築100年の古民家を活用した暮らし体験型シェアハウス「COM(M)PASS HOUSE」をオープン。遠山郷を軸にした人の交流拠点の運営に関わる。信州の企業と若者のマッチングイベントに参加したことがきっかけとなり、大学院卒業後は飯田にUターンせず、軽井沢のベンチャー企業に就職。休日を利用して遠山郷に通う生活を送る。定期的に東京へ足を運び、遠山郷とCOM(M)PASS HOUSEのPRしている。

 

湯澤英俊

飯田市IIDAブランド推進課 1978年生まれ。大学卒業後、模型ホビー会社を経て飯田市役所入庁。企業誘致や県境を越えた広域連携、大学との連携事業等を経て、一昨年から現職。 現在、地域社会での相互の認め合いと当事者意識を持って共創する「場づくり」と、生きることのリアリティをローカルの視点からつなぎ、「もっと居心地の良い暮らし方」、「もっと柔軟な働き方」、「もっと楽しい学び方」を追求するRound Table IIDA事業を展開中。