何よりもまず、自分自身が楽しむことから

━━本日は、授業開始前のロボット教室にお邪魔しました。ここでこれから、ロボット教室がはじまるんですね。まずどのように授業を進めていくのか、教えていただけますか?

立花輝彦さん(以下、立花) まずは教科書にあるその日の課題をもとに、それぞれが持っているパーツセットのなかから部品を集めて揃えるところからですね。「これを何個」と正しく部品を選ぶことから、学びがはじまっていきます。

━━ 自分で部品を探して準備するところからなんですね。

立花 そうです。初級にあたる「プライマリーコース」では、どれが必要な部品なのかわかりやすいように、テキストに原寸大で部品が描いてあるんです。こうして少しずつでも理解していくことで、家に帰っても想像したロボットをかたちにすることができるわけです。

━━ パーツを集めたら、組み立てていくんですね。

立花 はい。1回の授業で1体のロボットを作ることを目標にして、そこから応用に挑戦もします。プライマリーではロボットを組み立てるだけですが、ミドルクラスになるとロボットに一定の条件で電子音を出させたり、動かしたりといったプログラミングの方法も学んでいきます。

開講したのは昨年9月ながら、すでにフランチャイズ契約を結んでいるヒューマンアカデミーで定期的に開催される「ロボットコンテスト」で優秀賞を獲得した子もいるんですよ。

━━すごい! どのような内容で受賞されたんでしょう。

立花 今作っているロボットはすべて、部品(形)とモーター(動き)を組み合わせることで多様なロボットを生み出していく、というものなのですが、基本構造の発展によって、ちょっと面白い動きや形を生み出したということで、改造部門の優秀賞をいただいたんです。

ヒューマンアカデミーではこのように全国の子どもたちの発想を受け止めて、また新たな教材づくりにも役立てているようです。

三月の優秀改造奨励賞を受賞した久保田光彦さん(小学1年生)。毎回教室に来るのが大きな楽しみになっているのだそう(写真=古厩志帆)

━━ すでに面白さが伝わってきますが、このロボット教室フランチャイズのどのような部分に魅力を感じたのでしょう。

立花 フランチャイズであれば何でもよかったって言うわけではなく、やはり「ものづくりの一環である」と言う事と「子どもに教えられる」と言うこととですね。

教えるからには、事前に自分で見本を作らないといけないのですが、会社勤めしていたときは「作らなくちゃいけない」の気持ちで作っていたけれど、今は新しいものを作ってみるのが楽しみで仕方ないというか……。一定のレクチャーを受けたら、あとは各教室のカラーで比較的自由にできるのも、ヒューマンアカデミーの魅力でした。

━━ ご自身がまず、楽しんでいらっしゃるんですね。

立花 ですね、今すごく楽しんでいます。

「好き」だからこそ、めざして歩んだものづくりの世界

━━そもそも、立花さんがものづくりの世界に進んだきっかけは、なんだったのでしょう。

立花 そうですね……僕、ガンダム世代で。プラモデルづくりが大好きだったんです。

決して裕福な家ではなかったのですが、お小遣いをためては、ガンダムのプラモデルを買って、組み立てて。小学生から始めて中学生ぐらいまで、結構熱中して作っていました。完成品で遊ぶことよりも、作るまでが楽しいタイプでしたね。

けれど自分の将来という現実を見てみると、中学校を卒業したら高校には進学せずに、父のつながりのある旅館に勤める、という進路がほぼ決まっていたんです。兄はその道に進んでいったものの、僕はその現実に対して次第に、「どうにかしてそれ以外の道に行けないだろうか」って、考えるようになっていて……。そんなとき、飯田市に当時、一年制の技術専門学校があるのを見つけたんです。ここに行くしかない、と思いました。

━━これが進むべき道だと。

立花 はい。とにかく一年でいいから専門学校に行かせてくれと父親を説得して、学校に通って。そして卒業になったらなったで、せっかく学んだからもったいないといって、製造業に就職することを説得して。じつは、そこの専門学校って、通えばほぼ100%就職できるという学校だったんですよ。飯田には製造業の会社が多いので、引く手数多だったんですね。だから面接も、親に内緒で先に受けてしまって(笑)。

━━自分の進みたい道へと、計画的に進んでいかれたんですね。

立花 半ば強引に、進んでいきましたね。

━━無事、精密機器の会社に就職されたわけですが、その後実際に働いてみていかがでしたか?

立花 すごくやりがいがあって、「ものづくりがやっぱり好きだな」と感じながら仕事ができた30年でした。

━━どのようなお仕事に携わっていたんですか?

立花 まず旋盤やフライスという、機械を使った加工に携わりました。素材は鉄からアルミから樹脂から、ひと通り手がけました。その後、プログラムを組んで旋盤加工を行う「NC旋盤」を会社にはじめて導入したり……30年の会社員生活で、経験はたくさん積ませていただきました。

ただ、唯一心残りだったのは、自分たちが作っている部品が何に使われているのか、いまいちわからなかったということだったんです。

━━どこに使われて、何のためにあるパーツなのかがわからないと……そういうものなんですね。

立花 意外と、そういうものなんです。車の部品とか、OA部品とか、ざっくりとしたことはわかっても、メーカーから下請け、孫請けと仕事が降りてきたときに私たちに届くのは図面と記号のようなパーツ名だけで、何に使われるとかどう役立つというのは、あまり関係がなくなってしまうものなので。そういう意味では今、教室で教えれば、子どもたちから反応があったり、次にどう伝えるかを考えたり、とても手応えがある仕事をしている充実感があります。

ものづくりの経験を、事業承継で未来へつなぐ

━━2019年度の「飯田市ビジネスプランコンペティション」にて特別賞を受賞された立花さんですが、審査員から評価を得たそのプランは「治工具加工事業の事業承継で起業するのに合わせて、ロボットプログラミング教室の事業でも起業し、『ものづくりという現場の技能とプログラミングという次世代を担う技能の両方の特性を楽しく学べる場』を提供する」というものでした。治工具の加工事業の事業継承についても教えていただけますか。

立花 やはり、好きで続けてきたものづくりの世界なので、なにか関わっていたいと考えたときに、妻のつながりから事業承継を望んでいるという方をご紹介いただいたんです。その方の事業は需要があり、売り上げもあるのに跡継ぎがいないのでいずれ誰かにやってもらえたら、ということでしたので、今その方のところに少しずつ通って仕事を学んでいるところです。

大量に製造して納品する部品製造とは違って、治工具加工業はモノを作るもととなる工具の製作になるため、納品数が1つとか、せいぜい10個程度でいいから、技術さえものにすれば自分一人でもつないでいけるかなという感触はもっています。

━━なるほど、モノそのものを製造するのではなく、モノを作るための道具を作る職人的な事業を受け継ごうとされているんですね。

立花 そうですね。私自身は飯田から出たことがない人間なので気づかなかったのですが、かつて北海道出身の妻に「私の暮らしているところはこんなにものづくり企業はないよ」と言われたことがありました。考えてみればこの辺は飯田、伊那、諏訪まで製造業が盛んな地域が続いていますし、製造業同士のネットワークがあって、お互いに助け合ったり、こういう加工ならあそこに聞いてみたら、というような支え合いで発注元の要望に応えながら、ともに発展してきたという側面も大きいんです。

企業側もそうしたものづくりの技に信頼を置いていて、「こんなものを作りたいけれどどうしたらいい?」と私たちに相談をもちかけて、意見をもとにものをつくっていくという場面も多い。どうしても大都市部の大手メーカーでは知識が専門的なものに偏ってしまうなか、私たちは総合力と実践力で、解決策を導き出していくわけです。この、お互いの強みを生かしあえる関係性がもっと認められて広がっていったらいいのに、っていつも思っています。

━━ものづくりの現場の知恵があってこそ、大きな理想もかたちにできる、ということなんですね。

立花 そうなんです。だからといって、ことさらに「地位向上を!」と訴えるつもりもないのですが、せめて営業をする人やプログラムを行う人にもそのことをわかっていただいていたほうが、よりよいものづくりはもちろん、コストダウンにもつながっていくと考えています。

子どもたちが地域で働きたいと思える環境づくりを

━━立花さんとしては、今後事業承継ができたら本格的に二足のわらじになっていく、というイメージでしょうか。

立花 そうですね。ただ、実際に走り出してみたら、おかげさまでロボット教室のほうが3教室にまで増えてきたので、一人でどのくらいのスピード感でその理想にたどりつくかはわからないのですが……。そうなれたら、子どもたちにもロボット製作に加えて、ものづくりの現場も見てもらいたい。事業承継とロボット教室、両立できたら1番理想的なんですけれど、まだまだ、これからですね。

━━では、現状を踏まえてこれからの目標はどんなところにありますか。

立花 まずはロボット教室で、子どもたちに「プログラミング的思考」をもっと、的確に伝えていけるようになりたいですね。

プログラミング的思考とは大まかに「順序立てて考え」、「試行錯誤をして」、「物事を解決する」という3つの柱からなっていて、この思考が身につくことで課題解決能力が高まると考えているんです。

これをロボット教室に当てはめてみると、テキストをしっかりと読みこみ、どんなものを完成するか想像して、結果時間内にロボットを完成させたり、自分なりに自分の改造したロボットを作っていく、ということになると思います。

このような思考を子どもたちが身につけて実践していけるように伝えていくことは目標の一つです。

━━しかし「ものづくりの技能を次世代へ」という事業承継のコンセプトも、興味持たれる企業も多そうですね。

立花 ありがとうございます。ものづくりの現場が身近にあるこういうエリアでは、生きた「知恵」に触れるチャンスは多いし、学びとしても入りやすいのかなという思いもありますね。

ものづくりが好きな子が、すぐに東京へ出て行ってしまうんじゃなく、自分と同じように飯田に残ってもらってものづくりに携わっていってもらえたら何よりです。そのための環境づくりがここでできたらと思っています。