歩数計の技術を活かし、健康や医療の分野に進出

――まずは、事業内容からお聞かせください。

佐々木邦雄さん(以下、佐々木) 弊社は健康・医療・美容機器製品の企画・開発・製造を行うメーカーです。主力製品は、歩数計や消費カロリーなどを計測する「活動量計」で、8割程度を占めています。OEMODMと言われる大手企業のブランドの商品製造が中心で、その多くは設計、開発から製造までを一手に担っています。

創業して26年になりますが、私自身がそれ以前に勤めていた会社で歩数計を作っていました。昔の歩数計は振り子の揺れを利用した機械的な作りのものでしたが、私たちはそこでICを使った電子式の歩数計を開発して世に出しました。創業して3年を過ぎたころ、その会社が歩数計の製造をやめたり、そこの社員が弊社に来てくれたりということがあって、歩数計の分野に取り組み始めました。

——現在、歩数計や活動量計の市場はどのような状況なのでしょう。

佐々木 歩数計の市場は2007年ぐらいがピークで、そこから下降が続いています。スマホなどに機能が搭載されて、特別歩数計を買わなくてもいいという世の中です。一般に販売されているものは、お年寄りが歩数だけが分かればいいというものだけで、価格帯も安くなり、市場も小さくなってきて状況としては良くありません。

そこで我々は、J style+(ジェイスタイルプラス)という自社ブランドを立ち上げ、歩数計のノウハウを活かした商品開発に力を入れています。

佐々木邦雄さん。株式会社アコーズ本社にて。 写真=古厩志帆

——詳しくお聞かせください。

佐々木 近年、歩数計や活動量計は通信タイプのものが増えてきています。2009年に「FeliCa」という、タッチするとデータがパソコンに吸い上げられる非接触型ICカードがソニーで開発され、その時に弊社で、世界で初めて通信ができる歩数計を作りました。当時は大手企業に製品を持ち込んでも「なにこれは?」という感じだったのですが、今は通信でデータを共有、可視化することが利点となり、自治体や企業から採用いただくことが増えてきました。

——データとして蓄積し、可視化できるのが強みですね。

佐々木 今、国を上げて40兆円とも言われる健康保険料を下げようとしています。また、厚生労働省だけでなく、経済産業省でも「健康経営」ということを打ち出している。企業は従業員の健康管理に力を入れる時代になっています。

そんななか、弊社の通信活動量計を導入いただいている1500人規模の企業では、データが利用者全体で共有できることで、競争意識が刺激され、モチベーション維持や活動量の増加にもつながっていると聞きます。

今までは歩数計や活動量計そのもの、つまりものを売るという仕事をしてきましたが、こうしたみなさまの健康維持に役立つ「システム」を提供するような分野を拡大したいと考えています。

開発、製造した製品の一部。人だけでなく、犬や猫などペットの活動量を計測するものも。写真=古厩志帆

睡眠管理ができる計測器、リハビリ中も使用可能な歩数計開発も

——I-Portに申請されたのは、どのような理由からでしょうか。

佐々木 弊社がこれまで培ってきた技術を活かし、次のステップに進みたいとの思いからです。活動量計の展開では、昨今睡眠障害やそれに伴う事故なども問題になっており、睡眠の計測に需要があります。計測器を付けて寝るだけで睡眠の計測ができる。睡眠の解析をすることで寝具メーカーさんが商品販売に役立てたり、早朝勤務の運転手さんの睡眠管理を行ったりしていただいています。

他にも、医師のみなさまと共同で開発しているもので、リハビリをする方のための歩数計があります。通常、歩数計は上下の運動を感知し数をカウントしますが、リハビリをしている方たちのなかには、すり足になってしまい上下運動が取れない方も多くいらっしゃいます。そこで上下以外の揺れで歩数をカウントする発想を取り入れて、先日おかげさまで特許を取得しました。

ウェアラブル(装着型)の活動量計や美容ローラー、医療機器など展開の幅は広い。 写真=古厩志帆

——色々な分野に需要があり、展開が可能なんですね。

佐々木 はい。さらに活動量計以外の分野では、錠剤の薬の包装に取り付ける機器があります。薬を飲んだ日にちと時間を、錠剤を押し出した時に記録できるものです。これを端末にかざすと、薬をいつ飲んだかがデータとして記録できます。製薬会社は新薬を開発する際に、10万人くらいの試薬データを取らなければならないのですが、これまでは治験者の方の手書きの記録を打ち込む必要がありました。こういった機器があれば、それが全く必要なくなるわけです。こうした付加価値の高い商品を今後も開発し、BtoCからBtoBの市場に入っていく考えです。

毎朝のウォーキングや畑仕事で気分転換しています

——佐々木さんは、ここ飯田市のご出身ですね。

佐々木 はい、生まれも育ちも飯田です。実家もこの近くで、ずっと暮らしてきた場所に会社をつくった感じですね。畑仕事が好きで、30年以上前から自分で野菜を作っておりまして、野菜はほとんど自分で作ったものを食べています。無農薬無化学肥料で20種類以上作っていますが、夏になると出張が多いので草だらけになって大変です。虫は一個ずつ潰しますよ(笑)。

毎朝だいたい3時半には起床して、4時ごろからウォーキングをするのが日課です。夏だと4時にはもう空も明るくなってくるので、涼しい朝の時間に畑をやります。朝型なぶん、夜寝るのが早いので、私はいい睡眠データが取れますよ(笑)。

トマトやじゃがいも、とうもろこしや枝豆など多品種を栽培している。 写真=本人提供

——このあたりで過ごした思い出はありますか?

佐々木 小さい頃は川で泳いだり、魚を捕まえたり。この近くには氷を作る池があったんですが、夏はそこが空き地になるので野球をしたりもしましたね。近所の子たちと場所取りでよく喧嘩もしました(笑)

もう一つ思い出深いのは、お正月のどんど焼き。私の頃は、小学校の上級生が中心になって、松集めから組み立てるところまで子どもだけでやっていたんです。で、つくってそのままにしていると他の地域の子たちが来て、早朝に火をつけられちゃうんですよ。だから、冬の寒い時に、むしろで小屋作って一晩中そこで監視をするんです。小学校6年生がね。今の子たちじゃ考えられないですよね。

——従業員さんも飯田の方が多いとか。

佐々木 あえて飯田出身者を選んでいるわけではないのですが、ほぼ飯田出身ですね。飯田の人は良すぎるくらい人柄がいい。気候と一緒で穏やかですよね。近頃は全国的に、若者がものづくりから離れていく傾向にあるように感じますが、若い世代にはぜひ、ものづくりの楽しさを知ってほしいと思っています。ビジネスではシステムの分野に伸びしろがあるけれど、結局そこには「モノ=製品」が必要になります。精度の高い「モノ」がなければ、精度の高いデータも取れない。ものづくりの技術がなくなっていくと、良いデータを取ることもできなくなってしまうというのは、忘れないでほしいですね。

アコーズならではの技術で、この先も「求められる企業」に。

——最後に、今後の展望を教えてください。

佐々木 弊社では、「グローバルに考え、ローカルに行動する」という経営理念を掲げています。グローバル的な視点で世界状況や国内状況をしっかりと見据えながらも、自分たちの規模、特性でできることでコツコツと地固めをしていきましょう、というわけです。

株式会社アコーズの社内にて。 写真=古厩志帆

じつは、弊社には営業部門がありません。新しいお客さんは、なぜか営業に行かなくても向こうから来てくれます。調べてみたら、こういう製品を日本で作っている中小企業があまりないということがわかりました。大手同士だと同じようなビジネス展開をしているので、そういうところとは組みたがらないですよね。それで探していると飯田にこんな会社があったということで、お問い合わせいただくことができています。

——規模感も含めてのオリジナリティによって、名だたる大手企業からも頼られる存在となっている、ということですね。

佐々木 そうかもしれません。弊社では現状で特許を8件、商標登録を17件、ほかにもいろいろと独自の技術を持っていますが、今後も今までと同様に声を掛けていただくためにもコツコツと自分たちの足固めをしていかなければならないと思っています。他のところにないものを作り出していく、それを一歩一歩積み重ねることで、常に求められる会社でありたいですね。

写真=古厩志帆