3代目社長の葛藤。働く環境を大切に。

──沢さんは3代目の社長とお伺いしました。まずは社長になられた背景をお伺いしてもよいでしょうか?

沢宏宣さん(以下、沢) 弊社は私のお爺さんが創業者で2代目が私の父、私が3代目になります。実はこの環境がずっと嫌で…あまり前向きに捉えていませんでした。苦労している父の背中をたくさん見てきたので、社長業に楽しいイメージを持てなかったんです。跡を継がないと……と、感じていたのですが、「他の人生もあるんじゃないか?」と、自分の可能性を信じたいという葛藤と戦っていましたね。

──社長になられる前はどのようなことを…?

沢 工業大学を出てからは、大阪の商社で営業マンとして勤めていました。飯田に帰ってきたのは30歳の頃です。自分をここまで支えてくれた両親や社員のみなさんのことを考えると、いよいよ腹を括ろうと思えたタイミングがあったんです。これは社会に出たからこそ気がつけたことですね。

当時はまだ父が社長をしており、私はここで約8年間社員として働いていました。まあ、でも父親が社長というのもなかなか大変なんですよ(笑)。

代表取締役社長沢宏宣さん

──どういった点が大変だったのでしょう…?

沢 お互いに会社を良くしていきたい思いは強いのですが、時間軸や時代性などの意見の違いがあり、周囲の方に恥ずかしいくらいのバトルをたくさんしてきましたね……。ただ、向いている方向は同じなので、信頼関係が崩れることはなかったですけどね。

今、社長になってちょうど10年。当時は危機感でいっぱいだったことを覚えています。世の中の変化が激しい中、製造業は右肩下がりだったので、時代にあったやり方に変えていかなければ、と思っていました。

──沢さんが社長になられてから事業も変化させたのでしょうか?

沢 社名も社屋も新しくしました。でも急ぎ過ぎていたかもしれません。社員がついてこれず息切れしている状況もありました。 結局は周りの人と納得しながらじゃないと事業は進まないですよね。親の代からのものを引き継ぎつつ、少しずつ変化させていきました。

三和ロボティクス株式会社の工場兼事務所

沢 7年前にここに工場を移転し、その頃から事業を拡大させ、社員がどんどん増えていきました。私が社長になった頃は30人くらいだったのですが、今では100名以上の社員がいます。社員が増えるのは嬉しいのですが、50人を超えてからは、意見がまとまらなかったり、コミュニケーションが分断されてしまったりと、今まで苦労しなかったことが顕在化してきたんです。

そこで、責任や権限を分散させ、組織として回るようにスタイルを変えていきました。今はいかに社員に気持ちよく仕事をしていただけるか、という「働く環境づくり」を大切にしています。それが社長の仕事という風に捉え方が180度変わりましたね。

──職場の雰囲気も変わられたのですね。今は社員の方にどのように職場で過ごしてもらいたいですか?

沢 ワンマン社長を支えるスタイルから、組織化をしてひとりひとりが走る企業を目指してきました。社員がそれぞれにやりがいや成長を感じてもらえたら嬉しいなと思っています。

ここ最近はとくに、若い社員が増えているので、未来を信じてくれる若い方にも「この仕事は面白くて夢がある」と思ってもらえるような働きがいのある職場環境にしたいですね。

過酷な環境から人を解放する「NEXSRT」とは?

──では、御社の具体的な事業についてお伺いさせてください。

沢 弊社の製品はすべて、人の代わりに機械が仕事をしてくれるような「自動化の装置」に関わるものが商品です。事業は2本柱となっており、精機事業とスマートファクトリー事業があります。

創業当時からおこなっているのが精機事業。 下請業としてメーカーさんの製品部品を作って納めるというスタイルです。そして、もうひとつのスマートファクトリー事業は自社製品の製造です。最近だと今回I-Portにも認定された「NEXSRT(ネクサート)」が代表としてあります。

沢 自社ブランド製品となると、商品企画から販売、営業、その後のサービスなども必要になります。精機事業ではやってこなかったノウハウが必要となり、手探り状態だったので最初は大変でした。

スマートファクトリー事業は1990年から始まり、いろんなものを作っては販売していたのですがなかなか売れなくて……。中には売れたものもあったんですけど。

──どういったものが売れたのでしょう?

沢 自社の精機事業の工場で、人がやると大変な作業を自動化に置き換えて良かったものを商品化したときは売れたんです。なので、ある時から社内需要のあるものを開発し、よかったら販売するというやり方に変えて行きました。その中で最も新しいものがこの「NEXSRT」なんです。

NEXSRTの全体像

──「NEXSRT」についても詳しくお伺いできますでしょうか?

沢 これは、人間の腕みたいな形をしたロボットで、関節のように動かすことができます。例えば、家電量販店でも売っている食洗機がありますよね。今は食洗機にお皿を入れるのは人ですが、ロボットに手首とハンドセンサーを付け、お皿を掴んで食洗機に入れるようにプログラムを組んで指示を与えれば、人の代わりにロボットがお皿の出し入れをすることも可能です。

簡単に言うと、ロボットも部品の一つとして、他の部品と組み合わせたものがロボットシステムです。我々の仕事はそのように、ロボットを使ってシステムアップすることなのです。

実際にNEXSRTでは、お皿の代わりに金属部品を搬送します。また食洗機とつなげるのではなく、工場にある工作機械に接続させます。従来は人が、工作機械から金属部品を取り出したり取り付けたりしていましたが、この作業をまるごとロボットが代わりにやってくれる装置です。

NEXSRTがわかりやすく説明された図

──こちらはそれぞれの会社に合わせてカスタマイズされているのでしょうか?

沢 そうですね。一社一社のニーズに合わせて、違うものを作っています。基本パッケージシステムがあるのですが、そこからお客様に合わせて、それぞれカスタマイズしています。今は、我々のような精機事業の方にご使用いただいており、大手企業から家族経営の中小企業さんまで幅広くお使いいただいています。

──「NEXSRT」は今後どのように使っていただきたいですか?

沢 特に人がやるにはあまりにも過酷な作業の代わりになればと思っています。例えば、重いものを持つ重労働や危険な作業、同じことを繰り返し行う単純作業など、実際に人がやっている作業っていっぱいあるんですよね。そういう過酷な環境から人を解放して、もう少し人の能力を発揮できる仕事にシフトできるようにロボットを活用してもらえたらと考えています。

NEXSRTを稼働している工場の現場

──「NEXSRT」の今後の展望は?

沢 NEXSRTは2018年後半から本格的に売り出して、ちょうど一年半ほどになります。ロボットシステムは気前よく買える金額ではないですが、その中でも実績が出ているので、今はその実績を着実に積み上げたいと思っています。そして確固たる国内実績ができた時には、海外への輸出を目指したいと思っています。

ロボットを活用した先進的なモデル事業に。

──「NEXSRT」が今後の働き方を変えるきっかけにもなりそうですね。ですが、ロボットを使うとなると結構なコストがかかる印象があります。

沢 それはやっぱりかかってしまいますね。できるだけ多くの方にご利用いただけるようにロボットのハードルを下げるのは我々の仕事だと思っていますし、そこは業界の課題です。製造業界は人不足なので、需要はたくさんあるんです。

──ゆくゆくは今よりも気軽に取り入れられるようになるのでしょうか?

沢 そうですね。今もだんだんそうなってきています。最終的には家電と同じようにアプリからピッと操作できるような世界になると思いますよ。一般家庭に普及してくるまでにはさらに技術的なハードルが上がるので、まだ時間はかかりそうですが、そういう時代に向かっているのは間違いないと思っています。

──この業界ならではの苦労はありましたか?

沢 かつて、ある製品で特許侵害で訴えられたことがあります。地元の声を聞き、オリジナルで作った製品だったのですが、先方がすでに同じ技術で特許を取っていたんです。結構売れて、開発にもお金がかかった製品なんですけどね……。知的財産に関わることは、自社ブランド製品を作るうえでかなり注意しないといけないと、改めて実感した出来事でした。

その当たり前の怖さを知ることができたのは大きかったですね。こういう経験があったからこそ、レベルアップできましたし、いつでも失敗から得られたものは大きいです。今は前よりうまく進められるようになったかなと思っています。

──この度、I-Port第12号支援決定事業として認定されたとのことですが、I-Portを知ったきっかけはなんだったのでしょう?

沢 銀行さんから、飯田市でこのようなバックアップがあることを教えてもらったのがはじまりです。海外輸出を目標とすると数年単位の中期計画が必要になるので、そういう相談や応援をI-Portがしてくれるとお伺いし、相談したのがきかっけですね。こうして応援いただけるのは本当にありがたいことです。

──では最後に、御社の今後のビジョンをお伺いできますでしょうか?

沢 まずはNEXSRTの実績をつけることからですね。実は、昨年は1000名ぐらいの方が、日本全国からNEXSRTを見にこの川路へ訪れたんです。皆さん、NEXSRTが本当にちゃんと働くのか?というところを見に来られるのですが、その時に僕らは自社の工場を案内しています。

スマートファクトリー事業部という部署がNEXSRTの担当となっていますが、お客さんが見られるのは精機事業の工場でのNEXSRTの動きです。自社工場ではNEXSRTを使用して、実生産をしているので、こちらを見ていただき納得いただいています。

このように弊社の事業は、ふたつの事業があってこそ成立しているんです。ただロボットを作るだけではなく、それを使用した現場を持っていることがうちの強みでもあります。

また、事業として伸ばすべきは、市場の成長性が高いスマートファクトリー事業です。そのためにも精機事業を改善しながら、しっかり継続して守っていきたいと思っています。そして、いろんなところからお客様が見に来られる時に、思わず真似したくなるような先進的なモデルであり続けたいと思っています。