起業家部門13件、移住起業家部門1件、新事業チャレンジ部門13件の計27件がエントリーされた、今年度の飯田市ビジコン。専門家で構成された審査会が、新規性、地域貢献性、実現可能性などの観点から一次審査、二次審査を行い、起業家部門4件、移住起業家部門1件、新事業チャレンジ部門2件の計7件が入賞に選ばれました。入賞者には奨励金として最大50万円、最優秀者には最大100万円が交付されます。 

 今年度、最優秀賞に輝いたのは、大曽根康人さんによる「地域の医療と生活を支える共存型AI事業」です。医療現場の課題に対し、AIを活用して医療経営の安定化や医療従事者の負担軽減につなげる取り組みが高く評価されました。 

 表彰後、受賞者によるプレゼンテーションが行われました。 それぞれの事業内容、評価、入賞者のコメントは以下のとおりです。 

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〈起業家部門〉入賞 
南信州Golflab(ゴルフラボ)山口 泰弘さん 
事業名「『救急車を呼ばない人生を』ゴルフと健康ケアで地域を支える」 

 「ゴルフ×整体×クラフト」を掛け合わせ、地域の健康寿命を支える新たな形のインドア施設を提案した山口さん。ただの練習場ではなく”体をケアしながらゴルフを楽しむ”健康支援型施設“を設け、飯田から新たな健康文化を発信することを目指しています。 

 審査員からは「準備期間に高齢者を対象にアンケートやヒアリングを重ね、需要を見極めている点」や「地域の雇用につながる計画である」ことが評価されました。 

 山口さんは「かつてはこの地域でもゲートボールなど盛んに行われ、体を動かし仲間と笑い合える場がありましたが、今はそうした機会も減っています。運動不足や転倒による救急搬送も増えている中、健康と笑顔を取り戻す場所をつくりたいと思いました。80歳を過ぎてもゴルフを生きがいとして楽しめる体を支え、ゴルフを人と人を結ぶ生涯の健康づくりにつなげていきたいです!」と熱く語りました。 

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〈起業家部門〉入賞 
フィールドチロ 宮内 智也さん 
事業名「古材のインフラ~古材と地域木材の循環システム~」 

古民家や空き家の増加を背景に、古材と地域木材を「地域の財産」として循環させるインフラづくりを構想。解体し、処理してしまうのではなく、必要とする人へつなげる「マッチングの場」を整備することで、地域の風景と技術を次世代へ継承する拠点づくりに取り組んでいます。 

 「移住後に地域のコミュニティに溶け込み、人的ネットワークを構築してきた点からも実現可能性とビジネスの伸び代が感じられる」と評価されました。 

 「古い建物に携わる中で、『この材はどんな歴史を歩んできたのだろう』と感じる場面が多くありました」と、古材への想いを語る宮内さん。「解体してすぐゴミにするのではなく、きちんと分別して一度ストックし、必要とする職人さんや施主さんと結びつけたい。古材を起点に、人や技術が循環する場所を地域の中につくっていきたいです」と展望を話しました。 

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〈起業家部門〉入賞 
お好み焼4resT(フォレスト) 宮澤 知未さん 
事業名「地域内業者から仕入れた食材にこだわった『お好み焼』による丘の上地域活性化事業 

 飯田市・並木横丁でお好み焼き店を営む宮澤さんは、本場大阪の有名店で働いていた経験を活かし、地元の食材や調味料にこだわったお好み焼きを提供。店を軸に、地元資源の魅力を伝えながらまちのにぎわい創出にもつなげています。 

 「豊富な経験に基づく現実的な事業計画であること」や「地元食材を積極的に活用している点」が高く評価されました。 

 プレゼンで宮澤さんは「この地域でしか手に入らない食材を使い、ここでしか食べられないお好み焼きを届けたい。長年の夢だったお店を続けられているのは、地域のおかげ。テイクアウトや季節メニューを通じて、フォレストと一緒に地域の魅力も伝えていけたらうれしいです。ぜひ皆さま、足を運んでみてください!」と明るくPRして締めくくりました。 

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〈移住起業家部門〉入賞 
㈱CARING HEALTH HOME 杉山 慎太郎さん 
事業名「『健康を守る』から『健康を創る』モバイル診療で 届け、医療・保険外訪問看護・介護(飯田モデル)事業」 

 モバイル診療を軸に、医療、看護、介護、予防、生活支援を一体で届ける「飯田モデル」を提案した杉山さん。飯田市の中山間地域で医療資源が不足していることを踏まえ、市内の診療所から看護師がモバイル診療を請け負い、地域に近い看護師グループが対応する仕組みの確立により医療格差の緩和を目指します。 

この事業は「人口減少と高齢化が進む中でニーズが高まることが明らかであり、社会貢献性が非常に高い」ことが評価されました。 

 杉山さんは「飯田市には人口減少と高齢化が進む中山間地域があり、医療・医療機関・医師・看護師・介護人材の偏在、高齢者世帯の家族からのサポート不足などの課題があります」と分析。「医療、看護、介護、予防、生活支援を切れ目なくつなぐ仕組みを構築し、飯田市をモデルに広げていきたい。そして地域のみなさんがこの地域で生まれてよかったと思える社会づくりを目指したいです」と語りました。 

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〈新事業チャレンジ部門〉入賞 
特定非営利活動法人いなだに竹 Links 曽根原 宗夫さん 
事業名「TAKE action 持続可能な地域内循環を構築する竹チップラグで雑草の悩み解消」 

 いなだに竹 Linksの代表として、これまでにもさまざまな放置竹林対策を続けてきた曽根原さん。竹の炭素率の高さや、窒素飢餓により作物の成長に悪影響を与える可能性がある点に着目し、今回新たに雑草の発生を抑制する「竹チップラグ」を開発しました。放置竹林と雑草対策という二つの課題に対応できるこのラグは、2−3年後には分解され土壌改良剤として活用できるマルチ材です。 

「放置竹林の整備と防草を結びつけた発想の面白さ」「環境に配慮された事業である点」が評価されました。 

「竹は切っても切っても出てくるもの。だからこそ資源として捉え、継続的に活用することが大切」と曽根原さん。「この竹チップラグを敷くことで草取りの負担を減らすことができるうえ、2から3年後には土に還る。お財布にも自然にも優しい循環の仕組みを、飯田モデルとして広げていきたいと思いますのでみなさん活用してください!」と呼びかけました。 

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〈新事業チャレンジ部門〉入賞 
一般社団法人Wellnest Links  中島 和子さん 
事業名「こころの外部支援室 ―定着と成長 離職ゼロを支える地域密着型EAPモデル」 

 「働く人が安心して話せる外部相談室を」をキャッチフレーズに地域密着型EAPモデル「こころの外部支援室」の設置を提案。研修、ストレスチェックの活用、組織分析などを組み合わせ、メンタル不調の予防から人材育成まで携わることで企業の風土を支えていく仕組みです。 

 「人手不足が進む中で、地域の雇用を守る取り組みとして時代に合致」していることや、「地域の雇用を守る取り組みとして実現可能性が高い点」が評価されました。 

 「これまで2000件以上の相談業務をさせていただく中で、企業側からは『若手が定着しない』『離職の理由がわからない』という声を、働く方からは『話す場所がない』『話しても無駄』という声をそれぞれ聞いてきました」と中島さん。大切なのは退職を決意してしまう前に話せる場所があること。「働く人が気持ちよく、安心して働けるような相談環境づくりを目標に、相談することが当たり前の社会を目指していきたい」と穏やかに話しました。 

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〈起業家部門〉最優秀賞 
メディコーデ 大曽根 康人さん 
事業名「地域の医療と生活を支える共存型AI事業」 

 今年度、最優秀賞に輝いた大曽根さんのプランは、医療現場や地域社会が抱える課題に対し、AIを活用して質の高い支援を提供する事業です。提供するAIは、大きく分けて二つあります。 

 一つが「Cloragrine(クローラグリネ)」です。人の考え方や心情、行動パターンなどをAIに学習させ、その人らしい表現を支える仕組みです。医療の現場では、認知症やパーキンソン病、精神疾患など、進行とともに言葉や表現が失われてしまうケースに着目し「患者さんの言葉を模倣し、想いを伝えるAI」としての活用を想定しているという大曽根さん。たとえ自分の言葉を発しにくくなっても、その人らしい意思や表現を補うことを目的としています。 

 もう一つが、非属人化医療経営AIアシスタント「Cerberus Assist(ケルベロスアシスト)」です。医療機関の倒産率が高まっている社会課題を背景に、医療経営コンサルタントの知見をAIとして実装。三匹の犬をモチーフに、診療報酬の算定や保険審査、返戻対応に加え、財務や労務までを視野に入れ、医療経営や事務負担を足元から支えます。診療報酬改定の影響を予測し、経営課題への対応策を示す「賢犬(Ken-ken)」、保険審査への対応を支援する「Chu-ken kuro-suke」、財務や労務などの分野も学習し医療経営全体を担う「Chu-ken 8co」の三つの役割で構成されています。 

 審査では「これまでの職歴や専門資格を活かしながら事業化を着実に進めている」ことや「実証段階で具体的な成果を上げている実現力の高さ」「地域医療全体への波及効果が大きく期待できる点」などが特に高く評価されました。 

 「医療機関を支え、患者さんを支え、そこに暮らす住民の方々を支えていくために微力ながらお手伝いできればという思いから実現に至りました」と大曽根さん。「人の力が不足している部分をAIで補い、無理なく続けられる仕組みであり、使い方次第では医療現場だけでなく広く展開できます。さまざまな方が活用できる仕組みをこの飯田の地から育てていきたいです」と決意を語りました。 

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尾澤章審査委員長からの講評 

 入賞者のプレゼンテーションに先立ち、審査員長の尾澤さんから講評がありました。 

 まず最優秀賞の大曽根さんのプランについて「今回は審査員全員、満場一致だった」と明かし「構想の深さに加え、すでに実証段階にあり、今後の展開まで具体的に描けていた点が決め手になった」と講評。「AIを絡めた事業プランはここ数年いくつも挙がってきていたが、大曽根さんのプランは遠い未来の話ではなく『まさに未来を連れてきた人だ』と感じさせてくれた」と発展への期待値を高く評価しました。 

 他の受賞事業についても、具体的な観点からひとつ一つ講評を述べたうえで全体を振り返り「今年も非常に悩みながらの審査でした」と思いを吐露。一次審査で書類を通して事業の方向性や構想は確認していたものの「書類だけでは分からなかった背景や人柄、地域との関わり方が二次審査の場で明確になった。誰が、どんな思いで取り組もうとしているのか、その熱量が伝わってきた」と話し、二次審査のプレゼンの重要性に改めて触れました。 

 加えて「飯田市のビジネスプランコンペは『夢を語れば通る』という場ではありません。売り上げや利益、投資の循環といった現実的な視点がなければ、どれだけ良いアイディアでも評価は難しい」と強調。斬新さや話題性だけでなく、地域で事業として成立し、継続していくかどうかを重視している点は例年と変わらないと語り「そんなシビアな審査を経て選ばれた皆さんだからこそ胸を張って、リアルにつなげてほしい」と力強くエールを送りました。 

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佐藤健市長、飯田商工会議所の原勉会頭(福澤栄二専務理事)からあいさつ 

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 主催者挨拶に立った佐藤健市長は、受賞者7名に祝意を伝えるとともに、27件から7件へ絞り込む審査の難しさに触れ、審査員への感謝も表明。 

「地域に隠れているニーズや、それを解決するためのアイディアに毎年驚かされます。今年の7本の事業も、それぞれ特徴があり、よくぞ、そこに気がついてくださったなというものばかりでした」と、受賞したプランのそれぞれの優れた点や強みについて、自身の感想や想いを交えながら親しみを込めて語りかけました。 

最後は「それぞれの事業プランに敬意と感謝を申し上げます。これからのますますのご発展を期待しています」と受賞者全員へのエールで締めくくりました。 

 また、飯田商工会議所からは、欠席した原会頭に代わり、福澤栄二専務理事が挨拶を代読。「人口減少や人手不足、エネルギーや環境問題など多くの課題がある一方で、地域経済のあり方が問われ、次の時代に向けての転換点にあります。そうした中で、起業や新たな事業に挑戦しようとする皆様は、当地域にとって可能性を秘めた大きな活力です。皆様が起業人として事業を成功に導き、ご活躍いただけることを大いに期待しております」と激励しました。また、今回入賞に至らなかったビジネスプランについても、独創性や地域貢献性に富んだものが多かったと話し、今後も、指導員による伴走支援や、会議所活動を通じたネットワークづくりなど、チャレンジする人々を継続的に支援していく考えを示しました。 

 地域の医療、雇用、資源循環、そしてまちのにぎわい。多様な課題に向き合いながら、それぞれの視点で「事業として実装する」道筋を描き出した今年度のビジネスコンペティション。受賞を飛躍のスタート地点として、それぞれの挑戦が地域の未来を動かしていくことが期待されています。