新たな事業に挑む事業者の優れたビジネスプランを表彰し、その挑戦を後押しする「飯田市起業家ビジネスプランコンペティション(以下、ビジコン)」。12回目を数える2025年度のビジコンで最優秀賞に輝いたのがmedi coorde代表大曽根康人さんです。長くMR(医薬情報担当者)として医療業界に関わり、医療経営コンサルタントとしても活動する大曽根さんが構想したのは、「地域の医療と生活を支える共存型AI事業」。いったいどのような内容なのか、改めて詳しく聞きました。
AIの力を、医療に個人にカスタマイズ。新事業で飯田市ビジコン最優秀賞受賞│メディコーデ・大曽根康人さんが思い描く、地域のAI未来像とは
「自分」をインストールしたAIを使い、プレゼンのベースは15分で完成
━━じつは、ChatGPTなどのAIサービスに乗り遅れているほうなので、今日はどのようなお話がお聞きできるか楽しみでした。
大曽根康人さん(以下、大曽根) 私が提案しているビジネスプランは、どんな仕事やプライベートにも応用できることなので、いつでも相談してください。私自身、仕事の多くをAIに任せているおかげで、ものすごく時間に余裕ができました。それで余った時間を使って、先日も新しい資格取得に挑戦したんです。
━━たとえば、どのようなことをAIに任せていますか?
大曽根 じつは、今回の飯田市ビジコンの資料は画像を含めてAIに投げかけながら作成しました。そのほか、事業を広報宣伝するためのチラシの作成や、お客さまからのメールの返信なども、私の特性や言い回しを理解させたAIにベースをつくってもらっています。
━━なんと、ビジコン資料もそうだったんですね。
大曽根 はい(笑)。もちろん細部に関しては手作業で整えましたが、ゼロから自分でつくるよりもはるかに精度は高く、時間は短縮して仕上げられました。仕事柄、プレゼンテーションすることは得意ですが、早く仕上げられたぶん、想定問答など資料以外の方向に想いを向ける余裕も生まれましたね。
このとき大切なのが、たんに「AIに任せる」のではない、という点。私のビジネスの特徴や思考のクセ、よく使う言い回しなどを叩き込んだAIだから、15分で精度の高い回答が現れるんです。このような、「一人ひとりに寄り添うカスタマイズ」が、私が現在展開しているさまざまなサービスの核です。

━━今回のビジコンで提案されていたビジネスプランの一つ、クローンAI「クローナグリネ」も、資料にあったとおり「もう一人のじぶん」をつくっていただけるというクローンAIサービスでしたね。

大曽根 はい。これはビジネスアイデアを発想するきっかけとなった方が実際にいるんです。現在契約させていただいている最高齢のクライアントで、72歳の男性なのですが、難病といわれる進行性の病気を発症して、とても悩まれていたんですね。もともととても優秀で、周囲の人からも慕われているような人格者なのに、病気が原因でうまく想いを言葉にできない。そのことにすごく追い詰められている様子を見たとき、「AIで助けることはできないか」と考えたんです。
━━72歳の方に、とくに喜ばれたのはどんな面でのアシストだったのでしょうか。
大曽根 その方は詩作をされる方だったので、これまでの作品やご自身が書かれたテキストなどをすべて読み込ませ、詩を創作する手伝いができるようにしたところ、とても喜んでいただきました。
もちろん、最後まで詩作をAIに任せるというのではなく、自分にとって手が届かなくなってしまったような発想を連れてきてもらって、最後の仕上げは自分でもちろん修正していくという共同作業の最適な相手になってもらう。いわゆる「バイブコーディング(自然言語の音声認識によってシステム開発を行う手法)」のように、壁打ちで話しながら精度を高めていけるので、ある種、自分で自分と相談しているような感覚になれるのだと思います。
━━話したくても言葉が出ない、以前は自由に感情を伝えられていたり、表現ができていたのにそれが日に日にしづらくなっていく。そんな悩みを抱える方が、AIにいっしょに自分らしい考えのなかで言葉を紡いでいくことができるんですね。
大曽根 そのような存在になってもらえたらと願っています。なお、クローナグリネはご自身で作成いただく伴走型と、こちらで制作する完全依頼型の2種類をご用意していて、ご予算や興味関心によってお選びいただけるものとしています。
━━ビジコンでは、審査員のみなさんからAIの悪用などの安全面への質問もありました。
大曽根 はい、ありがたい質問でした。もちろんAIは、その精度の高さゆえ悪用すればさまざまなことにつながる危険があります。そこで、私のサービスは悪用されてしまうことないよう事前に契約をきちんと結び所在を明らかにするなど、安全面にも十分に配慮したものとしています。
大手製薬会社でのMR経験を生かした、医療経営AIアシスタント「ケルベロスアシスト」
━━ビジコンで語られたもう一つのプランが医療経営のアシストでしたね。
大曽根 はい。これは完全に、前職での経験を生かしたビジネスです。
━━以前はどのようなお仕事だったのでしょう。
大曽根 大手製薬会社で、いわゆるMR(医療情報担当者)として数多くの病院をめぐる仕事をしていました。そのなかで10年くらい、資格を取得したうえで医療経営コンサルタントをボランティア的にクライアントの先生方に行っていたんです。
━━「医療経営コンサルタント」という存在について、考えたこともありませんでした。
大曽根 そうですよね、いまや病院もきちんと経営ができないと、たんに名医がいるだけでは続けていったり、次世代へ継承したりといったことが難しいとされる時代なんです。その経営部分をサポートする医療経営コンサルタントは、病院やクリニックの経営改善や業務効率化など幅広い支援を行う専門家です。
しかし、経営のなかでも要でありながら、医療経営コンサルタントの有資格者でも理解が難しいのが、「診療報酬」の問題です。たとえば、健康保険が適応される診療行為に対して、国が定める価格=「診療報酬」というものがあるのですが、これが2年に一度という頻度で改定されるんです。その改定内容がとても複雑で、しかも近年は報酬を得にくい内容になりつつあると言われているんです。
さらに近年は、
・人員配置要件※だけでなく、その専門性がより強く求められる
・他医療機関との連携体制や共同体制の構築が要件に含まれる
など、構造的に難易度が高まり、医療従事者のみなさんの頭を悩ませています。
※医療法には医療施設や病床別の人員配置標準があり、手厚い人員配置であれば報酬が加算され、配置人数が少なければ減算されるなど、一定の経済的評価が行われている

大曽根 じつはこの状況により、倒産に追い込まれる国立大学病院や地域の病院が増えています。しかし、これはたんに受診人数ではなく、どのような診療実績があるかをカウントして伝えるという方向性へのシフトとも言えます。ならば、そのルールを理解することができれば正しく経営が改善できるのでは、というのが私も含めた多くの人の考えです。
━━なるほど、制度を詳しく理解しそれに則った判断ができれば改善できる課題がたくさんあるんですね。
大曽根 まさに。しかし、私が早期退職を決意した折に、実際に医師の先生方に「これまでのサポートを有償で行ったら受けていただけますか」とアンケートしてみたところ、答えはNOという厳しいもので……。
━━理由はなんだったのでしょう。
大曽根 「高額になるだろう」「疑問はすぐに解決したいものが多いが一人への相談では難しいだろう」という、率直なご意見でした。けれどそのように答えていただいたことで、私のなかで「AIの力を使ったサービスにすれば、この二つの課題をクリアできるかもしれない」と考えました。
━━これまでのキャリアや専門性にAIを組み合わせていったんですね。
大曽根 はい。ケルベロスというのはギリシア神話に出てくる神の番犬の名前ですが、ケルベロスには頭が3つあるのが特徴です。その名を関した医療経営AIアシスタントサービス「ケルベロスアシスト」は、レセプト(診療報酬明細)作成のアシスト、保険審査のアシスト、予測・戦略のアシストという3分野を幅広く担うサービスとしてご提供しています。

━━医療分野の内容は、間違えれば事故にもつながり得ると想像できます。そのうえで、たんにAIに聞くのではなく、あらかじめ医療情報を学ばせてカスタマイズされたものに頼れるのが魅力ですね。
大曽根 まさに。私自身も日々アップデートしながら専門性をこのAIに注ぐことで、信頼度の高いアシストを実現しています。しかも、一度設定が終われば人間が関わることなくサービスを走らせることができるので、一般的なコンサル会社の約2%という脅威的な価格でご利用いただけるのも強みだと思っています。すでに長野県の精神科クリニックさまや山梨県の内科クリニックさまほかに導入いただき、ご好評の声をいただいています。
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ビジコン最優秀賞の信頼感を足がかりに、飯田・下伊那地域の「頼れるAI相談者」として
━━ところで、ご自身にはもともとAIのようなテクノロジーに対する素養があったのでそうか。
大曽根 いえ、まったく。大学は芝浦工大工学部の応用化学科という理系出身ですが、AIについてはこのビジネスをはじめるにあたり一から学びました。まずは「ITパスポート」や「G検定」という資格を取得するなかでAIの基礎を習得していったんです。
━━AIを学ぼうと思ったのは、このビジネスをつくるために?
大曽根 そうです、じつはもともと私はAI否定派だったんです。人間の仕事を奪うとか言われますが、絶対そんなことはないだろうと思っていて。でも、当時私がこのサービスを構想しはじめたタイミングでちょうど、所属していた製薬会社もAIを導入しはじめていて、「否定するなら知らないとだめだろう、知ったうえで、建設的に活用していこう」と、勉強をはじめたんです。
それで学んでいくと、やっぱりこれはすごいなと。活用することで、むしろ私たちの生活を豊かにしてくれると、可能性を感じました。
━━AIで人生が豊かに。
大曽根 はい、私が設立した会社「メディコーデ」の理念はまさに「すべての方へ、ゆとりと豊かさを」。これまで苦手意識でつい後回しにしてしまっていたことや、面倒な情報処理などを信頼できるAIに任せることで、自分の時間、家族との時間をより豊かに持つことができると私自身が実感しています。
━━たしかにまだまだ、そこまで使いこなせている人は多くないかもしれませんね。
大曽根 そうなんです。そこでいまは、この地域でAIを知らない人、かつての私のように不信感を抱いている人の「?」を解決し、もっと役立てていただけるよう、各地で気軽な相談会を企画して、みなさんにまずAIの可能性を知っていただこうと思っています。人口減少による人手不足が課題である地方にこそ、AIが役立てる部分が多くあると思うんです。
ビジコンで最優秀賞をいただいたことで、私が暮らす地域のみなさんにもやっと「大曽根はずっと家にいるみたいだけど、何をしているんだ?」という疑問を少し払拭していただきました(笑)。これって、すごく大きなことなんです。

━━そうおっしゃっていただけて、なんだかうれしいです。これからは地域との接点を増やしていくお考えだとか。
大曽根 はい、現在は一時的に飯田市役所にも席を置かせていただき、AIを活用した行政側の企画立案、事務、運営や営業支援などのお力添えをしています。現在は4月25、26日に開催予定の「飯田やまびこマーチ2026」もお手伝い中。今年は「やまびこマーチ」40周年の節目として、私と私のやまびこ用AIの提案を多く取り入れていただき、これまでにも増して楽しんでいただけるイベントになっていますので、ぜひご参加ください。
そして、より多くのみなさんとの出会いがあるようにと、カフェや図書館、公民館などで積極的にお話しする機会を設けています。これからの予定はInstagramに更新していきますので、こちらもぜひご覧いただき気軽にご参加いただけたら嬉しいです。
━━ありがとうございました。






