「お母さん手作りの洋服」を着ていた子ども時代。
自然とファッションの道へ

━━店舗のオープン、おめでとうございます。どのアイテムもとってもかわいらしくて、すぐにでも買い物がしたいくらいです(笑)。

田中美香さん(以下、田中):ありがとうございます。今店で扱っているアイテムはベビーから140までの子ども服がメインなのですが、最近、お母さんたちが着られるようなレディースのハンドメイド服の販売も始めました。

明るく広々とした店内。 写真=内山温那

━━こども服だけでなく、雑貨や小物も充実していますね。

田中:はい。じつは、店を持つまで全国各地のクラフトフェアに出店したり、インターネットのファッションサイトに出品していたんです。クラフトフェアに出店するといろんな作家さんと出会うので、もしお店を始めたら作家さんの作品も一緒に紹介できたらと思っていました。そこで、今は10人くらいの作家さんにお願いして、子ども服やアクセサリーなどの小物も仕入れています。

 

One Madeさん(@onemade.jp)がシェアした投稿

One Made公式アカウント@onemade.jpより。画像はOne Madeオリジナルの子ども用「移動ポケット」

━━そもそも洋服に興味を持ったきっかけはなんだったんでしょうか?

田中:母がおしゃれな人だったので、子どもの頃にいろんな格好させてもらえたのが大きかったと思います。バックを作ってくれたり、洋服を手作りしてくれたり。ファッションに興味を持ったのも、それがきっかけだったかなと。

自分の店を持ちたいと思い始めたのは中学生の頃。高校を卒業してから愛知県の服飾関係の専門学校に行きました。それから一度、飯田に戻って婦人服の縫製工場に 2 年ほど勤めて、洋服店でも働いて販売も経験しました。 ちょうどその頃ですね、大手のファッションサイトが注目を浴び始めて。服のインターネット販売についても学びたいと思っていたので、今度は東京に出てアパレル関係の会社に再就職したんです。

━━夢の実現のために、再び飯田を飛び出したんですね。

田中:はい、飯田では学べる事に限界を感じていたのもあって。
私、服の中でも特に古着が好きで、イギリスに憧れがあったんです。イギリスの人たちってどういう暮らしをしているんだろう、どんなところで買い物をしているんだろうというのを見てみたくて、それで、その会社を辞めて1年間イギリスに語学留学もしました。

マーケットを歩いてみたり、ヨーロッパの中を旅行したり。でも、実際に行ってみるとヨーロッパのきれいな街並みよりも、中東やアフリカの方が刺激的で面白かったんです。

━━イスラム圏の文化ってどこかエキゾチックで惹かれますよね。今日着ていらっしゃる服も袖のたっぷりとした形が特徴的です。田中さんの洋服作りには、旅の経験が反映されているのかもしれませんね。

留学中に旅したトルコ・カッパドキアの喫茶店にて。 写真=本人提供

わが子に着せたい服がない!
その思いから生まれたハンドメイド服

━━田中さんはこれまでの経験を生かし、生地選びからデザイン、裁断、裁縫までを一貫して行われています。そして、One Made の服の魅力は何といってもオーダーメイドやセミオーダーができるところ。なぜそのスタイルで子ども服を作ろうと思ったのですか?

田中:ずっと、レディース服しか作ったことがなかったんです。いちばんのきっかけは、ここ南信州に戻ってきて、息子が生まれたことですね。

今から5 年前、私の父が末期の癌になってしまって。当時は東京に暮らしていましたが、夫も豊丘村生まれなのでいつかは地元に戻ってこようとずっと話していたので、それを機に売木村に帰ってきたんです。その後に息子が誕生して。

実際に子育てをしてみて、子どもに着せたいと思える服に出合うことができなかったのも大きいです。たとえ気に入った服があっても、ものすごく高価だったり、すぐに毛玉ができちゃってワンシーズンで着られなくなったり。

━━子どもって成⻑が早いから、すぐにサイズが合わなくなってしまいますよね。

田中:そうなんです。だから、私が手がけるオリジナル服は子どもの成⻑にできる限り対応する服作りをしたいと思っています。例えばサロペットなら肩紐を⻑くしてボタンをつけて、ボタンで⻑さを調節できるデザインにしたり、洋服のどこかしらに「調整ができる部分」を作っています。

また、脱ぎ着がラクで体温調節がしやすいベストのような服も、比較的⻑く使えるアイテムになってくれると感じます。

ボタンで⻑さが調節できる肩紐。サイズが合わなくなったら、紐ごと取り外してズボンになる。 写真=内山温那

田中:それに子ども服って、柄が多いから飽きちゃうこともありますよね。帽子は、裏地を無地にしてリバーシブルでかぶれるようにもしています。

帽子にはマジックテープも施され、サイズ調節ができる仕様に。 写真=内山温那

━━これはすごい!

田中:あとは、洗濯に強い生地を使ったり、丈夫な縫い方をするようにしたり、たたんでも形が崩れないような作りにしたり。子育てをがんばるお母さんお父さんが扱いやすいように、という部分も意識しています。

━━子育て中の田中さんだからこその、細やかな配慮ですね。

田中:もちろん手作りの服が主役ですが、2年間服を販売してみて思ったのは、値段やブランドにこだわりすぎず、自分がいいと思うものを伝えていきたい、ということ。「今これが流行りだから」ではなく「自分の子どもに着せたい洋服」という軸だけはブラさずにやっていきたいと思っています。

薄手の国産デニム生地を使用した、オールシーズン着られる人気のサロペット。おしり周りの“ゆったり”した形がかわいい。子どもが動きやすいデザイン。 写真=本人提供

「自分を追い込む」ためにビジネスコンペに応募。
大きな挑戦を支えた家族の協力

━━2016年3月に開催された「飯田市起業家ビジネスプランコンペティション」では、見事準大賞を受賞されました。応募されたきっかけは?

田中:自分の店を持つという夢を「有言実行」するためです。それに、第三者の方が私の考えを聞いた時にどういう反応をするのか、見てみたかったのもあります。どう評価されるのか、本当はすごく怖かったけれど、自分を追い込むために思い切って応募しました。

今振り返ると、事業計画を発表するために資料を何十枚も揃えたり、真剣に考える時間をいただけたのはすごくよかったなあと思っていて。商工会の担当者の方のサポートがあったのもありがたかったし、本格的に店をオープンする前にこうした経験ができたことは自分の前進につながりました。

「飯田ならではのものを作りたい」と制作した「水引」のアクセサリー。周りの花びらは刺繍糸、中心に水引を使用。異素材を組み合わせた田中さんのセンスを感じるアイテムだ 写真=内山温那

━━店舗作りの計画は、どのようにすすめてこられたんですか?

田中:もともとは中古住宅をリノベーションしようと思っていたんですが、たまたま夫が以前勤めていた設計事務所の方が「250 年前の古い物件があるよ」と紹介してくれて。その建物をそのまま移築することになったんです。建っていたままの造りをそのまま再現しているんですが、店舗の設計は夫がして、建てたのは義理の父と弟なんです。

大きく立派な梁も、そのまま使っている。 写真=内山温那

━━ご家族みなさんで建てられたんですか?しかも全員、設計や大工の技術を持っているなんて……!

田中:この什器も夫が作ってくれて、このハンガーラックはお義父さん、帽子をかけているこの帽子掛けも夫の弟の手作りです。

━━最高な環境ですね。

田中:「店をやりたい」とは言っていたんですけど、たまたま移築の話が出て、たまたまそれができる土地が見つかって、と、本当に恵まれていたと思います。それに、何よりも家族が協力してくれたことが、いちばんの支えになりました。

やっと手に入れた自分の拠点。
「月いちマルシェ」でいろんな人が繋がる場所に

━━実際に店舗をオープンされてみて、いかがですか?

田中:やっぱりお店があると、お客さんにゆっくり見ていただけて、お話もできるのがいいですね。店内には私の作業スペースもあるんですが、今までは自宅の台所の一角に場所を作って洋服を作っていたので、自分の落ち着ける拠点ができたことも嬉しいです。

写真=内山温那

━━今後新たに挑戦したいことはありますか?

田中:回数は今までよりも減ると思うけれど、出店はこれからもしていきたいです。それに、店舗の駐車場を使って小さな「マルシェ」をやりたいと思っていて。いわゆる「クラフトフェア」にあまり興味がない方でも気軽に来られるような、庶⺠的な雰囲気のマルシェをしたいです。手作りの小物でもいいし、お野菜や飲食ブースが並ぶのも楽しいかな、と……。

━━「月に一度、あの店では何やら楽しげなことをやってるぞ」というのが定着していくといいですね。

田中:うちは個人店なので入りづらいと感じる方もいるかもしれません。それが月いちのマルシェをきっかけに入りやすくなったり、マルシェに出店している方との出会いを通じて「今度は出店していたあの店に行ってみよう」という人と人との繋がりができたらといいなと思います。

━━OneMadeを拠点に、どんどん楽しい輪が広がっていくような気がします。

田中:今準備しているところなのですが、近日中に公式のウェブショップもオープン予定です。

━━ウェブショップのオープンも楽しみにしています!ありがとうございました。

写真=内山温那