「ピッチ(短時間プレゼン)」飛び込みも加わり、濃厚な議論も展開

去る1月19日(木)、飯田市の産業振興と人材育成の拠点「エス・バード」にて開催された「Challengers MEET UP 飯田市起業家ピッチ+交流会」。

I-Port.bizとしては初のリアルイベントとなる本会は、飯田市工業課が実施している「飯田市起業家ビジネスプランコンペティション」の入賞者や、ビジネスコンペに興味のある起業家、さらにこれから起業を考えている方などの出逢いと交流の場づくりをめざして実施されました。

まだ寒さ厳しい気候のなか、会場に集ったのは総勢約30名。14名の起業家にI-Port.bizメンバー6名、ゲストには事業構想大学院大学教授でI-Port立ち上げ期よりアドバイザーを務める渡邉信彦教授、その他I-Portの支援機関でもある日本政策金融公庫、飯田市商工会議所のみなさま、会場を運営する南信州・飯田産業センターからも担当の方が駆けつけ、開始前からすでに会場の広さを感じさせない熱気が充満していました。

飯田市工業課課長からの挨拶のあと、最初の企画として用意されたのが7分間の「ピッチ」。「短時間で簡潔に自らの思い(事業)を伝える」ことを目的とするピッチには、事前申請のあった5名からさらに1名が加わり、6名が参加することに。

スタートの前にまず、“お手本”ということで、ゲストの渡邉教授に、自らが手がける事業に深く関連する「リアルメタバース」について「30分の資料を15分にまとめて」お話いただきました。

現状のバーチャルメタバースから、リアルメタバースへ移行していくステップ予測について語る事業構想大学院大学教授・渡邊信彦さん

「電話から文字、文字から画像、そして動画まで送ることができるようになったのが現在。ここから先は『空間を贈り合う』ことが一般的になる」とし、リアルメタバース時代のためのXRクリエイティブプラットフォームについて語った渡邉教授。その刺激的な内容に、一気に会場の集中力が高まりました。

■プログラム1 ピッチ発表

・在りし日/燕と土と/龍の穂 中島 綾平さん(宿泊業)

・Maison H 濱島由香さん(服飾デザイナー)

・横田商事㈱・横田幸一さん(不動産業)

・NSS(株)/CHAKICHI 松村 宰周さん(飲食業)

・宮内 智也さん(建築業)

・㈱sci-bone 宮澤留以さん (スポーツテック、スタートアップ)

ピッチ1 中島綾平さん「古民家宿『燕と土と』設立経緯と課題、そして新ブランド『龍の穂(りゅうのすい)』構想について」

続いて、中島綾平さんからいよいよ参加者によるピッチがスタート。

大手ビジネスホテル支配人の経験を経て2022年より一棟貸し古民家宿「燕と土と」を経営する中島さんは、その経緯と実績、課題について資料を交えてテンポよく語ったのち、次なる展開としての農産物ブランド事業「龍の穂(すい)」についても紹介。展開もよく、まとまった内容に、アドバイザーとして参加した日本政策金融公庫山口さんからも賛辞が贈られたほか、渡邉教授からは「課題として当初想定の年代の来客が少ないとのことだったが、価格帯を上げることとサービス内容を増やしてはどうか」とのアドバイスが投げかけられました。

日本政策金融公庫 山口支店長からの質問に答える中島さん。会場もメモを取るなど熱心に耳を傾ける様子があちこちで見られた

ピッチ2 濱島由香さん「新ブランド『結いおび』と、南信州らしさを生かしたオーダーメイドウェディング」

2番手は、濱島由香さん。服飾の専門学校を首席で卒業後、有名スタイリストのアシスタントやアパレルブランドの立ち上げにも関わった濱島さんがいま、手がけているのは、「結いおび」をはじめとする服飾事業。巻きつけるだけで簡単に締められるうえ、カラフルかつ個性的なアフリカンバティックを中心に製作した「結いおび」の世界発信に加え、ウェディングドレスのオーダー制作を核に地域の文化や農産物などを生かしたウェディングプロデュースなどの展望について、実直かつ熱意を込めて語りました。

アドバイザー参加の内山拓己さん(みすゞ中小企業診断士事務所)は、「南信州で結婚式を挙げる人の数は年間約400組程度と聞いた。これを多いとみるか少ないとみるかはそれぞれだが、とても良いビジネスアイデアなので中京圏まで含めたプロモーションをするのが良いのでは」とアドバイス。渡邉教授も「良い顧客とつながることが大切。結いおびの、海外も含めた地域外への発信を」と、飯田から世界へと羽ばたくべくエールを贈りました。

I-Port.bizでのインタビュー記事画面を背景に展望を語る濱島さん

ピッチ3 横田幸一さん「セルフ住宅展示場の浸透と不動産中央市場の確立をめざして」

次に登場したのは、横田商事株式会社・代表取締役横田幸一さん。飯田市羽場町を拠点に、既存の枠を超えた不動産業の多様なアイデアで18件もの特許を取得するなどの活躍を続ける横田さんからは、自身の悲願である「不動産中央市場」実現のためのサービスのひとつ「セルフ住宅展示場」を紹介。「各社の不動産情報をPtoP(対等なデータ連携)でつなぐとともに、土地を取得し、家を建てるイメージをオンライン上で描けるシステムを広げたい」と語られたほか、「アイデアをかたちにしてくださるデザイナーも募集中です」とのメッセージも会場に投げかけられました。

消費者の願いを実現する発想と実践に会場からも注目が集まった他、渡邉教授、山口支店長からは「関心をもつ多くの不動産会社がこのシステムに参画することで、消費者にとっての利便性や価値も高まっていくのでは」とのコメントが寄せられました。

ピッチ4 松村宰周さん「副業スリランカカレー店のこれまでと今後の展開」

 2020年に東京から飯田市へと移住、産業用機器製造メーカーに勤務する傍ら、副業として出張スリランカカレー店を営む松村宰周さんは、創業から今までの取り組みや収支について説明しながら、今後の展望についてを紹介。

 「今後は、すでに実践しているカレーづくりワークショップに加え、スリランカへのツアーも実施し、現在本業として勤務している会社から1事業として創業させたい」との展望とともに、さらに「飯田で暮らすようになってから地域の土地活用についても危惧を抱くようになり、前職である住宅メーカーの経験を生かした不動産業もできないかと考えている」との構想も語られました。

 渡邉教授からは「カレー店からスパイス販売を主軸にしたことで事業がブレイクしたケースを知っている、客単価を上げる方法を探ることと、ビジネスのなかの“跳ねる”可能性のあるポイントをつかんで伸ばしていけたら」とのアドバイスが寄せられました。

ピッチ5 宮内智也さん「古民家再生の実践からいま、考えること」

 「僕は、ビジネスの発表ではないのですが……」との言葉でピッチをスタートさせたのは、宮内智也さん。大学院で建築を学び、2020年に東京から飯田へと移住を果たした宮内さんは、そのきっかけとなった「大平宿」などでの古民家再生の経験から、「お金だけを介すのではなく、人が互いに関わり合うことで実現させる民家再生の方法がないか」と会場やアドバイザーの面々に投げかけました。

 現状の資本主義を超えた、新しい暮らしと経済のあり方がなければ、地方再生は加速しないのではないか、逆に言えばそこを乗り越えられれば地方に暮らしたい人は多く、心豊かな暮らしが実現するのでは、との宮内さんの提案に、渡邉教授は「新時代を感じる取り組み。DAO(分散型自立組織)なども近しい考えがあるのではないか。テクノロジーを上手に活用したそれらの実践も参考にしながらこれからのかたちを模索していくのはどうか」との意見が寄せられました。

ピッチ6 宮澤留以さん「あらゆる人の動作を測定し改善に導く、運動補助デバイスの開発・普及を」

「長野県での大会前の腕試しに」と、当日飛び込みにてピッチ参加された宮澤留以さん。「運動オンチだった」という自身の幼少期の経験とテクノロジーを組み合わせ、現行のものより精度を高く、かつ安価で運動動作の改善や習得に役立つ運動補助デバイス」について、3分間でぎゅっとまとめたピッチを展開。渡邉教授からは「6000円予定というデバイスの価格帯も魅力的。今後が大いに期待できる」との激励のメッセージが贈られました。

■プログラム2・3「小グループ交流会」「全体交流会」同業・異業者とのフランクな出逢いに、「こんな機会を待っていた」の声

白熱のピッチのあとは、各小テーブル4名ずつに分かれた「小グループ交流会」へ。進行役としてI-Port.bizメンバーも各テーブルに入り、限られた時間のなか自己紹介をしながらそれぞれの事業の課題や現状について語り合い、アイデアを持ち寄りました。

業種を超えた多様な意見交換の場に

続く「全体交流会」では、最初に事業展示に手をあげてくださった「ボンドガール」片桐さとこさんが自らの作品紹介をしたのち、フリートーク&名刺交換会へ。二人でじっくりと話し込む方、各所で小さな輪をつくり盛り上がる面々など、それぞれが限られた時間のなか思い思いの時間をすごす姿が印象的でした。

エコクラフト紙バンドを使った作品について説明する「ボンドガール」片桐さと子さん

■プログラム4「支援機関紹介・まとめ」

 まだまだ話し足りない、というムードのなか、あっという間に会は終了の時間に。I-Portの支援機関として同席をしてくださった・飯田商工会議所、日本政策金融公庫、南信州・飯田産業センターのみなさまより支援内容等についての説明・紹介を受け、すべてのプログラムが終了すると、飯田市工業課課長から「このような機会がもてたことは大変有意義だったと思う。今後も継続して開催していきたい」と、次回の開催が表明。参加者からも「このような機会を待っていた」「次の開催に来たい起業家は多いと思う」「もっとこのような場を南信州で設けてほしい」など、早速好評の声が寄せられました。

 こうしたご要望にお応えすべく、I-Port.bizでは今後も同様の催しを開催予定です。みなさまのご参加を引き続きお待ちしています!


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