長野県中小企業融資制度の「創業計画書」をモデルにしながら、事業計画書の書き方やお役立ち情報を紹介しているこのコラム。第3回目は「開業に必要な経験」と「強み」です。

なぜ強みについて説明を求められるの?

「自分の店の強みやセールスポイントなんて、やってみなければわからないよ」と言いたくなってしまいますね。ではなぜ強みやセールスポイントを創業計画書に書く必要があるのでしょうか?それは金融機関だけでなくお客さんにとっても一番気になるポイントだからです。

普段の何気ない会話の中でも、こんなやりとりはよくありますよね。

「どんなお店なの?」

「特徴は?おすすめのメニューとかはあるの?」

「○○とは何が違うの?」

当然ながら、ウェブサイトやチラシを作る場面でも、求人活動をする場面でも、広告を掲載する場面でも必ず聞かれます。それが強みやセールスポイントですので、創業のタイミングでしっかり伝わるような「言葉」にしておきたいですね。

「だれに、なにを、どのように」を深く考える

 強みやセールスポイントを言葉にするときの1つめのコツとして「だれに、なにを、どのように」販売する商売なのかについて、表面的な意味にとどまらず潜在的な意味まで掘り下げて考えることをお勧めしています。

 例えば「なにを(商品・サービス)」について、いちばん分かりやすいポイントは品質だと思います。でも、それ以外に強みやセールスポイントになりうるものはないのでしょうか?そんなことありませんよね。「スピードや納期が早い」というのも大切な強みですし、「費用対効果が高い」というのも同様です。みなさんも、商品やサービスを購入するとき、品質だけで選んでいる訳ではないはずです。

 同じことは「だれに」や「どのように」についても言えます。届けたいお客さんを研究して「○○な場面に特化した商品」というポジションを築ければ強みやセールスポイントと言えますし、一般的な商品であっても定期購入(サブスク)方式で販売できるルートを築けるのならばそれも強みになります。店舗の場合は「空間」の演出や「接客」も、大切な強みやセールスポイントの源泉です。

「強み」になりうることを自分自身の経験から考える 

 個人事業主や小規模事業者の場合は、その人の人生=ビジネスの強みやセールスポイントになる場合がほとんどです。「開業に必要な経験」を記載する欄があるのはそのためです。強みやセールスポイントを言葉にするときの2つめのコツとして、創業にあたってきっちり自分の人生を振り返って、役に立ちそうな技術、経験、人とのネットワークがないか整理することをお勧めしています。

 ちなみに創業セミナーなどでは、下のような表を描いてもらっています。これは人生の良かった時、悪かった時を直感的にグラフに落とし込んでもらったうえで、とくに「上下の流れが変わったとき」に何があったか、どんな人に出会ったか、どんな価値観を大切にして判断したかを振り返ってもらうために用いています。

やってみると、いろいろな記憶が蘇ってくると思います。新しく始める商売の強みやセールスポイントを整理するとともに、これから取り組む事業の「軸」に気がつくきっかけになることが多いです。

「自分自身の強み」は誰でも気づきにくいもの

 今回のコラムでは2つの方法を紹介しましたが、誰でも自分自身のよいところは一番気がつきにくいですよね。そんな時は本音で話せる友人や家族、そうした人がいなければ商工会議所や起業相談窓口の相談員と言葉のキャッチボールをしてみましょう。今の時代は金融機関の担当者も対応してくれることが多いので、相談相手に困ったら一度聞いてみることをおすすめします。「私の強みは何でしょうか?」といきなり相談すると変な人に思われてしまうので、紹介した2つの方法で自分なりに整理したうえで、創業相談として真剣に相談すれば、きっと一緒に考えてくれるはずです。

 自分の来歴や、ビジネスプランの「強み」を端的に伝えられるようになれば、融資をはじめその後の展開にも大いに役立ちます。また創業計画であれば「いまはまだ難しくても、いつか強みにしたいこと」を考えてコツコツ取り組むことも、将来の事業の成長のためには大切なことです。

今回は以上です。次回は「仕入先・販売先」についてになります。お楽しみに!


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