一冊読まなくても、トレンドをキャッチ。
忙しいひとにこそおすすめしたい「書評欄」

こんにちは。ふくしま新聞店の“ふくたつ”です。
突然ですが、皆さんは新聞の書評欄はお読みになっていますか?
新聞の書評欄は、毎週土曜日あるいは日曜日に掲載される紙面で、主に新刊書籍を紹介しています。新聞社によってはそれらを総合して「読書面」と呼ぶこともあります。

私は読書が趣味で、書店巡りが大好きです。特に独立書店は、そのお店の店主さんの個性が反映されていて本棚を眺めているだけで楽しいです。また、普段は出会えないジャンルの本に出合えて興味の幅が広がる、そういう良さもあります。新聞の書評欄もまさに書店巡りと同じで、素敵な本との出会いを演出してくれる場所です。でも・・「本は好きだけど読む時間がない」。そのような方は多いのではないでしょうか。私もそうです。読書が趣味ですが仕事と生活に追われて、なかなか思うようには本が読めません。ただ、多忙な現代人だからこそ、新聞の書評欄を読むメリットが実はあるのです。今回のコラムでは新聞の書評欄の活用法についてお伝えしたいと思います。

取り上げられるのは、各社選りすぐりの名作ぞろい。
選考過程にはプロの視点が

新聞の書評欄が取り扱う新刊書籍。その出版数は年間約7万5,000点と言われています。一日当たりに換算すると毎日200点以上。週当たりに換算すると毎週1,400点以上の新刊の中から、新聞の書評欄で紹介される本が選ばれます。ただ、新聞の紙面スペースには限りがあります。例えば、ある新聞の書評欄は約1,100字が1本、800字が5本、400字が2本と本数が決まっています。つまり、毎週1,400点以上の新刊の中から、毎週の新聞の書評欄に取り上げられる本はたったの8本。その倍率は175倍です。

では実際に新聞社ではどのように書評欄で取り上げる本を選んでいるのでしょうか。まず新聞社には社内外に委託した書評委員で構成される書評委員会が存在します。
そこでは新聞社が厳選した本が100冊程度、会議室に並べられます。100冊の中から書評委員が書評したい本を花丸(一つ)、◎(二つ)、○(いくつでも)をつけて選び、書籍の書評権を○の強さに従ってどの書評委員が持つか決めます。このように厳しい倍率をくぐり抜けて新刊書籍は読者に紹介されるのです。その選考過程には徹底したプロの視点がありますつまり、私たちは新聞の書評欄に目を通すだけで、膨大な数の新刊書籍の中から選りすぐりの良書と出会えるのです。新聞の書評欄は新刊書籍のセレクトショップと言っていいかもしれません。これが忙しい方に新聞の書評欄をおすすめする一つ目の理由です。

おすすめは「音読」。記憶力や意欲の向上にも

ただ、新聞の書評欄でその書籍に興味を持ったとしても、実際に読む時間がないという方もいらっしゃると思います。でも大丈夫です。新聞の書評欄を読むだけでもいいのです。
新聞の書評欄の執筆を担当している書評委員は、文芸や社会科学、自然科学の専門家です。執筆した文章も限られた文字数の中で、その書籍のエッセンス(本質・真髄)をギュッと凝縮して私たちに伝えてくれています。特に書評委員の方は書くことを職業とされている方がほとんどなので、ご自身の文体、テクニックを駆使されていて、一つの文章として完成されています。そして、新聞の書評欄を読むことで、その書籍に対する書評委員の視点や問題意識を共有できます。つまり、書評委員を通して読書の疑似体験をしているのと同じなのです。私のおすすめはその書評を声に出して読むこと。新聞の書評欄は文章が短いので音読しやすいです。音読することで脳科学的にも記憶力や意欲の向上につながります。興味を持った書評はぜひ音読してください。

書評欄を読んで、街へ出よう。
「予習」の効果で、情報感度が向上

新聞の書評欄を読んで、書評委員と書籍に対する視点や問題意識を共有できたところで、次は図書館や街の書店に行ってみましょう。図書館では私は特に新刊書籍の書棚に注目します。そこでは、新聞の書評欄で目にした書籍が何点か目に入ってきます。内容が難しそうな書籍は敬遠しがちですが、新聞の書評欄で事前に内容を予習してあると、いつもより抵抗なく興味を持って読み始めることができておすすめです。

書店では私は新聞の書評欄で紹介された本がどの場所に置かれているかに注目します。書店では売れ筋の本、仕入れ担当者が売りたい本を目立つ場所に置くことがあるので、新聞の書評欄で紹介された本の売り場での扱われ方、人気などを肌で知ることができます。

図書館や書店は、それ自体が本の情報を伝えるメディアであると言えます。図書館や書店に行く前に事前に新聞の書評を読んでおくだけで、現地に行った時に入ってくる情報量が格段に違うのです。情報の感度を高めるための一つの方法だと思います。

いかがでしたか?
忙しい現代人が本をゆっくりと読むことは簡単ではありません。もちろん時間的なゆとり必要ですが、最近スマホの動画やゲーム、SMSなど娯楽があふれていて活字離れが進んでいるといえます。でも週末だけでもコーヒーを飲みながら新聞の書評欄を読む。そんな生活スタイルも素敵だと思います。

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