中小企業診断士の内山です。起業家や経営者の皆さんが訪れる「相談窓口」。みなさんどんな悩みを抱えているのでしょうか?

このコラムでは、中小企業診断士に寄せられる「よくあるお悩み」を相談トップ10として、10位から順番にご紹介しながら、一般的な対応方法についてもご紹介しています。

第5位は…「お金を払うのが難しくなりそう」です!

とても深刻なテーマですね。具体的にはいったいどのような相談内容になるのでしょうか?

「お金を払うのが難しくなりそう」って、どういう状態?

 当たり前ですが、お金の流れは「入」か「出」の2種類しかありません。お金を払うのが難しいということは、「入」よりも「出」が多い状態が続いて、いよいよ手元のお金が足りなくなってしまった状態のことを言います。

材料の仕入れ、社員の給料、水道光熱費、家賃、税金、借入金の返済など、お金が出ていく場面は沢山あります。一方でお金が入ってくる場面は、補助金や借り入れなどによる資金調達を除いて、基本的には売上高の入金くらいしかありません。つまり売り上げが不足する状態が何ヶ月も続けば、当然のことながら手元のお金は足りなくなってしまいます。


言われてみれば当たり前のことなのですが、なぜこのような相談が絶えないのでしょうか?

肝心なことは「早期発見、早期対応」

ひとつポイントになるのは「決算書や月次収支は過去の結果しかわからない、未来の資金繰りは意志をもって自分で考えないと把握できない」という点です。決算書や月次収支(試算表など)を確認することは大切ですが、これらは過去の結果であり、漠然と眺めていても未来のことは読み取れません。健康診断の結果をいくら眺めていても健康にならないのと同じです。

健康診断の結果を見て「体重が増えているな」「この数値が悪化しているな」と気づいたら相談して対応策を考え実行する必要があるのと同様に、ビジネスにおいても「現預金が減っているな」「赤字が続いているな」と気づいたら対応策を考えて実行する必要があります。

どちらも共通しているのは「そのまま放置すると後で取り返しのつかない状態になることがある」という点です。健康管理でもビジネスでも、早期発見、早期対応が肝心になります。

一番良くないのは「一人で抱え込んで誰にも相談しないこと」

この「お金を払うのが難しくなりそう」という相談ですが、意外なことに、毎月キチンと収支を確認している方でも、追い込まれた状態で相談にいらっしゃることが多々あります。

 「なんでもっと早く相談に来てもらえなかったのだろう?」

 「1年前に来てもらえれば、まだ対応策が沢山あったのになぁ」

 そのたびにこんな感想を持ってしまうのですが、相談者の中には「大切なお取引先や給与への支払いを滞らせるわけにはいかない」「金融機関にはお世話になっているから返済を遅らせるわけにはいかない」という思いが強く、個人の貯蓄や生活費で穴埋めをしたり、自分の給料をゼロにして何ヶ月もしのいだりしている方が一定数いらっしゃるのです。こうした対応は根治療に繋がらないため、かならず販路拡大やコスト削減といった「出口戦略の策定と実行」をセットで行う必要があります。また出口戦略を策定することで、金融機関も借入金の一時的な返済猶予などに応じてくれる場合もあります。

出口戦略を考えずに自己資金を投入し続けるのは、止血をせずに輸血を始めるようなものです。しかしながら、そうした根治療に繋がる動きを取らずに、2年も3年も苦しい状態を続けて状況を悪化させてしまう相談者さんは少なくありません。

 長い目で見れば、こうした状態は自分だけでなく、突然の倒産などに繋がり取引先もお客さんも不幸になります。きちんとした計画を立てて誠意をもって実行すれば、いまの時代は金融機関もキチンと話を聞いてくれます。相談窓口も沢山あります。早ければ早いほど選択肢は沢山あります。

「最近現預金の残高が減ってきたな」「最近資金繰りが大変になってきたな」と感じたら、一人で悩まず、ぜひ早めに相談してもらえたらと思います。

 

いかがでしたでしょうか?次回のテーマは「従業員が定着しない」です。人手不足の問題もあり急速に増加している相談テーマになります。お楽しみに。

(文責)

みすゞ中小企業診断士事務所 内山拓巳


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