
今回お話を伺ったのは、ショートアニメーション制作の最前線で活躍する株式会社NOKID(ノーキッド)のCOO、平野 広樹さん。神奈川県横浜市出身の平野さんは、現在、飯田市に空き家を購入し、東京との二拠点居住を実践しています。週の多くを、共同創業した株式会社SUITENのプロジェクト「HIGASA」−天竜峡に建つコワーキング・ワーケーション・宿泊複合施設を拠点-に過ごし、クリエイティブと地域活性化を掛け合わせた事業をすでに動かし始めています。都会のスピード感の中で走り続けてきた平野さんが、なぜ今、南信州の山々に囲まれたこの地を選んだのか。移住の背景から、仕事観の変化、そしてこの土地で描く未来のビジョンまでを伺いました。
「クリエイティブの力で、この場所に新しい”物語”を作りたい」と語る平野さんが、飯田でどんな日々を送っているのか、詳しく聞いていきました。
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出身地 神奈川県横浜市
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現居住地 長野県飯田市
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Uターン歴 6ヶ月
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仕事/暮らし 株式会社NOKID
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── 現在はどのようなお仕事をされていますか?
「クリエイターが居心地のいい世の中へ」をミッションに掲げる株式会社NOKIDでCOOを務めています。具体的には、アニメーションCM・MV・SNS向け映像制作からキャラクターIP企画・開発まで、事業戦略の策定、制作物のプロデュース、クリエイターのタイアップまで幅広く担当しています。これまでに1,400以上のプロダクションを統括してきた実績を持ち、最近はSNS等での動画需要が非常に高く、スピード感のある現場で日々新しいコンテンツを生み出しています。

── 横浜出身の平野さんが、なぜ今、飯田市を拠点に活動されているのでしょうか?
きっかけは、筆者である渡邉くんとの縁ですね。僕たちは同郷の友人で、仕事面でも僕らが制作するアニメーションに付随するデザインタスクを彼に依頼するようになり、打ち合わせや作業のために飯田へ何度も通うようになりました。
最初は「仕事のついでに遊びに行く」感覚だったのですが、通ううちに渡邉くんを通じて、この地域で活動する同世代の面白いメンバーに出会ったんです。彼らの地域に対する熱い想いや、古い空き家を再生して新しい価値を作ろうとする動きに直接触れて、だんだん「自分もここで何かしたい」という気持ちになってきました。

── 移住してきて、地域の印象はどう変わりましたか?
外から来た人間として見ると、まず「余白がめちゃくちゃある」と思いました。都市だと、何かやろうとしても既にある文脈や競合がたくさんあって、参入のハードルが高い。でも飯田は、アイデアさえあれば試せる土壌がある。しかも歴史や文化が深くて、リニアの開通も控えている。ポテンシャルをちゃんと持っている地域なのに、その面白さがまだ十分に伝わっていない気がして、もったいないと感じました。
── 現在はどのようなスタイルで働いていますか?
弊社は出社とリモートワークのハイブリッド制を導入しているので、基本的には飯田の自宅や、天龍峡にある「HIGASA」をベースに活動しています。

HIGASAはサテライトオフィス・コワーキング・お試し住宅・観光休憩所を兼ね備えた複合施設です。ただのシェアオフィスを借りているのではなく、自分たちが作っている場所で仕事をしている感覚ですね。さらに、NOKIDとしても2026年2月に「NOKID IIDA STUDIO」を開設し、アニメスタジオ「RE:LY」の拠点をつくっています。

飯田は「いつか本腰を入れる場所」ではなく、今まさに仕事を作っている場所です。

── NOKIDを立ち上げる前は、どのようなキャリアを歩まれていたのですか?
元々はセールスの会社にいて、全国を飛び回りながらYouTubeに出稿する企業CMを商材とするセールスをやっていました。毎日数字を追いかけるハードな環境でしたが、そこで「何が世の中に求められているか」を肌で感じる力は養われたと思います。
転職を考えていた時期に、前職の同期だった現在の代表に誘われたのが転機でした。当時はまだアニメを事業にするという青写真の状態ながら、彼のビジョンに共感して、NOKIDの立ち上げから携わることになりました。営業で培った「売る力」と、彼が持つ「創る力」を掛け合わせれば、面白いことができる確信がありました。
── 都会での生活と比べて、飯田での働き方に変化はありましたか?
一番大きな変化は「思考の深さ」ですね。東京にいると、どうしても情報量に圧倒されて、目の前のタスクをこなすスピード勝負になりがちです。でも、HIGASAのようなゆったりとした時間が流れる場所で、窓の外の緑を見ながら仕事をしていると、中長期的な戦略や「そもそもこの事業で誰を幸せにしたいのか」という本質的な部分にまで思考が及びます。
また、HIGASAには先日コラムに載っていた原 岳さんをはじめ、全く異なるバックグラウンドを持つ人たちが集まっています。彼らと仕事をしつつ雑談しているうちに、自分の本業である「IP(知的財産)創出」や「クリエイティブ」を、どう地域活性化にスライドさせられるかという新しいアイデアなども湧いてきます。
── 移住にあたって、ご家族の反応はいかがでしたか?
実は妻も同郷の横浜出身で、中学校時代の同級生なんです。彼女もこの大きな環境の変化を楽しんでくれています。休日は二人で里山の風景の中でバーベキューをしたり、近くのキャンプ場へ出かけたりと、田舎暮らしを全力で満喫していますね。
驚いたのは、地元(神奈川)の友人たちが頻繁に遊びに来てくれることです。「ヒラのところに遊びに行こう」と、旅行がてら訪ねてくれる。神奈川にいた頃よりも、むしろ彼らと濃い時間を過ごせている気がします。ホストとして地域の魅力を案内するうちに、自分自身もこの土地に新しい気づきがあったりしていい循環になっています。

── 飯田に来てから、精神的な変化はありましたか?
「やりたいことが渋滞している」状態ですね。都会だと、何かを始めようとすると競合が多かったり、コストの壁にぶつかったりして、形にする前に息切れしてしまうことも多い。でも飯田には、挑戦を受け入れてくれる「土壌」と、面白がって協力してくれる「仲間」がいる。
自分のスキルセットをどうこの土地にアウトプットするか。アニメーションを通じて地域の歴史を可視化したり、地元のキャラクターをプロデュースして外貨を稼ぐ仕組みを作ったり……。実現できる可能性があると考えているので、毎日が最高に楽しいです。
── これから飯田下伊那で挑戦したいことは?
僕たちが得意とする「ショートアニメ」や「キャラクターIP」の力を使って、地域の魅力を新しい層に届けていきたいです。伝統工芸や観光資源を、ただ紹介するのではなく「物語」としてパッケージ化することで、若い世代や海外の人たちにも刺さるコンテンツにできるのではないかと模索したりしています。
また、僕のような二拠点居住者がもっと増えるような仕組み作りにも関わりたいですね。都会で培ったスキルを、地方というフィールドで解放する。その楽しさを身をもって証明していきたいと思っています。
── 最後に、移住や二拠点居住を検討している人へメッセージを。
もし「自分のスキルが都会の中で埋もれている」と感じているなら、一度外へ飛び出してみることをお勧めします。地方には、あなたの力を必要としている場所が驚くほどたくさんあります。

飯田には、HIGASAのように温かく迎えてくれるコミュニティがあります。まずは観光ではなく「仕事を持ち込んで数日間過ごしてみる」ことから始めてみてください。パソコン一台あればどこでも働ける時代だからこそ、自分が「どこで、誰と、どんな景色を見ながら働きたいか」を選択する自由がある。その選択肢の一つに飯田が入るなら、全力で歓迎しますよ。
[株式会社NOKID 公式サイト] https://nokid.jp/
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