2026年4月、飯田市育良町に新たな施設を構え、装いも新たにスタートした新井歯科医院。院長の新井功秀さんは亡きお父様の跡を継ぐかたちで、かつて地域で親しまれていた同名の歯科医院を8年越しに再開させました。「美容室に行く感覚で、気軽に通える歯科医院を」。そんな想いで開業したばかりの新井さんに準備期間のご苦労や今後への想いをお聞きするとともに、新井さんが開業資金の調達等に利用した飯田市の新事業創出支援協議会「I-Port」についてもお話をいただきました。
【飯田市I-Port支援事業】父の想いを継ぎ、歯科医院を再開。29歳の開業とこれから│新井歯科医院・新井功秀さん(飯田市育良町)
地域の人々に愛される、父の姿が原点
――ご開院おめでとうございます。新しい建物に広い駐車場を備えていて、訪れやすい明るい印象の歯科医院ですね。
新井功秀さん(以下、新井) ありがとうございます。大人の患者様には「美容院に来る感覚で楽しく来られる歯科医院」を、小さなお子様にも「虫歯になったら来るのではなく、日ごろから楽しんで通える場所」と認識してもらえることをめざしました。

――もともとこの場所は、新井さんが生まれた地元でもあるとか。
新井 はい、すぐ近くで生まれ育ち、18歳まですごしていました。今回の開院にあたり、久しぶりに地元で暮らす日々に戻り、うれしいです。
――お父様が「新井歯科医院」をこの地で開かれていたことは、地元の方ならみなさんご存知ですね。
新井 そう思っていただけていたらありがたいです。もともと新井歯科医院は父が1988年から2018年まで開業していました。けれど、僕が大学生のときに父が急逝し、これを機に休院となっていたんです。
身内から言うのもお恥ずかしいですが、子どもの僕から見ていても、父が院長として治療にあたっていた新井歯科医院は、地元のみなさんに愛される、訪れる人の絶えない場所でした。その姿を見ていて、僕自身も自然と「父のような歯医者さんになれたら」と、歯科医を志すようになったんです。恥ずかしいので、当時はそんなふうに言わなかったですけどね。

プロフィール)
新井功秀(あらい・かつひで)
飯田市育良町出身。飯田高校を卒業後、愛知学院大学歯学部歯学科を卒業。神奈川県横浜市での研修後、愛知県名古屋市、山梨県でも勤務経験を重ねる。2026年4月1日、父が開業していた歯科医院と同名の「新井歯科医院」を飯田市育良町にリニューアルオープン。「誰もが入りやすい歯科医院」をコンセプトに、バリアフリー設計の新医院を設立、高齢者の口腔ケアから小児矯正まで幅広い治療に対応する。またSNSでも歯科予防などの情報を発信し、話題を呼んでいる。
「30歳までに地元で開院したい」。願いを叶えるべく、各地で経験と学びを重ねて
――「お父様のような歯科医に」の想いが、地元でのリニューアル開業に繋がったのですね。
新井 はい。父が亡くなったのは、僕が歯科を学んでいた大学4年生のとき。そのとき考えたのは、「しっかりと経験と学びを重ねたうえで、30歳までには新井歯科医院を再びオープンさせたい」ということでした。学びのために一旦、外に出ましたが、早く地元飯田市に帰ってきたい、という気持ちも当時からありました。
そこで、「30歳」の目標から逆算し、自分だからこそ提供できる技術と実務の経験を重ねて、こうしてリニューアルした新井歯科医院をオープンさせることができました。
――現在29歳、まさに計算どおりです。これまでどのようなことを学び、経験してこられたのでしょう。
新井 まずはとにかく経験を積みたいと考え、横浜にある24時間365日診療を受け付ける歯科医に勤務しました。24時間診療なので当然、当直もあり、休みも決して多くありません。そこで頑張れたことで自信につながりましたし、かなり勉強をさせてもらいました。
続いて勤務したのは、名古屋にあるインプラントや矯正を得意とする歯科医院。子どもの矯正がとても上手な先生が院長で、こちらもとても勉強になりましたね。同時に2年間かけて日本ではまだ取得者の少ないアメリカのインプラント資格のコースに学び、無事認定を受けることができました。

――歯科医療の技術も日進月歩だと思います。これまでのご経験から感じる近年の傾向や、御院で心がけたい治療について教えてください。
新井 いまは「できるだけ歯を削らずに」という潮流があると思います。そのためにはまず、虫歯予防やそれにつながる日々の点検が大切です。定期検診はもちろん行いますが、最も大切なのは家でのケア。そこで、大人の方もお子様にも、歯科衛生士から積極的に歯磨きの方法をお伝えしています。当院の歯科衛生士は、教え方が本当に上手な人ばかりなんですよ。もちろん、歯ブラシや歯間ブラシなどの口腔ケアグッズの販売も行なっていますので、気軽にご相談いただきたいです。
そして、削らなければいけなくなっても、できる限り最小限に、しかし確実にというところを心がけています。器具もかつてのように大きなものではなく、小さなものから揃えて、必ずルーペをつけて治療を行います。加えて、インプラントをはじめ、自由診療の選択肢も多くご用意しておくことで、患者様がご納得いただける治療にたどりつけるようにと考えています。
また、大前提として、患者様が納得できる治療を選択できるのは、医師や歯科衛生士との信頼関係があり、なんでも聞ける、相談できるような間柄であることも大切だと思っています。僕自身、じつは患者さんと何気ない会話をすることが大好きで。歯科衛生士のスタッフとも、コミュニケーションの大切さをよく話しています。「新井さんのところで話を聞いてもらおうかな」と、そんな感覚で訪れてもらえたら、とても嬉しいです。
開業に飯田市のビジネス支援協議会「I-Port」を活用。「経営計画のブラッシュアップに役立ちました」
――今回、開院にあたって飯田市が用意するビジネス支援の一つであるI-Port(新事業創出支援協議会)をご利用いただきました。どのようにお知りになりましたか?
新井 融資の相談に行った銀行さんから提案していただきました。「事業計画のプレゼンは必要だけれど、金利も優遇されていておすすめです」と言っていただき、「面白そうなのでやります」と(笑)。挑戦させていただくことにしました。
――I-Portは、飯田から世界へはばたく事業や、商品・サービスを高付加価値化する事業を認定・支援する制度です。今回の申請には、都市部に行かなくとも、この地域の皆様に最先端の治療を受けていただきたいという思いがあったとお聞きしています。
新井 ありがとうございます。実際、支援いただけるのかどうか、不安でもありましたが、プレゼンをさせてもらえたことで自分自身がふんわりと考えていた「なぜ開業したいのか」「どんな医院にしたいのか」が整理できたことに加え、経営の数字の根拠もが見えてきて、とてもありがたい機会になりました。医療機関も、いまは経営のことをきちんと考えなければいけない時代ですので、専門家のみなさんから質問をいただいて答えるやりとりのなかにも、たくさんの学びがありました。
そして、銀行さんのおっしゃるとおり、
1)貸付利率年1.1%
2)当初12か月の支払い利子相当額の2分の1を補助
3)必要となる信用保証料の全額を飯田市が負担する
など、条件がとてもよくて。「開業・創業する方は、ダメ元でも挑戦してみたほうがいいですよ!」と、心からおすすめしたいです。

――I-Portを経営面・資金面の両面でお役立ていただけたとのこと、とても嬉しいです。
次回は、SNSで話題となっているプロモーション戦略などについてもお聞きできればと思います。ありがとうございました。







