飯田市は遠山地区の歴史あるお祭り「霜月祭」に行ってきました。 「上町 正八幡宮」の霜月祭。(お祭りの詳しいお話は、この先を読み進めてみてください!) 月の明かりがきれいな静かな街の中に祭りの音色が響き、 鳥居をくぐってたどり着いた社の中では、中心の竃を囲んで舞が始まっており、和やかでありながらも熱量感じる祭りが始まっていました。

足を踏み入れたら感じる氏子の人たちの持つ雰囲気の温かさと力強さ。それがなんとも魅力的な姿として記憶に残っています。

(古厩志帆)

変化しながらも、受け継がれる
遠山の霜月祭り

櫻井 更(飯田市南信濃地区出身)

普段は静寂な信州最南端の遠山郷に12月上旬になると神楽の音色が響く。800年の歴史を持ち国指定重要無形民俗文化財に指定されている「遠山の霜月祭り」です。

この祭りは太陽の力が弱まる旧暦11月(霜月)に神々を招いて生命の再生や五穀豊穣を願うもので、遠山郷(飯田市上村地区、南信濃地区)に点在する神社で湯立神楽が奉納されます。今年も八つの神社で大祭が執り行われました。

2001年に大ヒットした宮崎駿監督のアニメ映画「千と千尋の神隠し」で、神々がお湯に入り疲れた体を癒すシーンは、この祭りがモチーフとされています。

祭りでは社殿の中央に据えられた釜の上には神座が飾られ、湯を煮えたぎらせ神々に捧げます。見どころは、祭りのクライマックスになると天狗などの面が登場し煮えたぎる湯を素手で“はねかる”、「湯切り」。このときふりかけられた禊の湯によって、一年の邪悪を祓い新しい魂をもらい新年を迎えるといわれています。初めて参加される方は是非この禊の湯を浴びていただきたいものです。

祭りの詳細はこちら http://shimotsukimatsuri.com/ (遠山郷観光協会HP)

毎年行われる祭りですが、年々人口流出や高齢化に伴う氏子の減少により開催が厳しくなっているという厳しい現実もあります。上村地区では4か所ある神社のうち3か所で地区外の者である「助っ人」を募集し、彼らが祭りを支えてくださっています。比較的人口の多い南信濃地区においても、4か所ある神社のうち2か所で同様に「助っ人」が祭りに参加しています。毎年参加する「助っ人」にとっては、伝統行事に参加するということはもちろん、段々顔なじみになっていく地元の皆さんとの交流が楽しみとなっているようです。

「助っ人」募集のほかにも、本来は男性のみの祭りであったこの祭事に、笛や着付けあるいは炊事場において女性も参加をするようになり、また、開催日を地区外に居住する若手の氏子が参加しやすいよう定日から週末にずらすことや明け方まで行っていた祭りを深夜で切り上げるなどの対応を行っています。

しかし、残念なことに今年から南信濃地区の2か所の神社では湯立神楽を執り行わず、神事のみの開催となってしまいました。今後ますます人口減少、高齢化が進む中で、伝統ある祭りを如何に守っていくかが大きな課題となっています。

このようななか、氏子の高齢化で10年ほど前から湯立神楽を中止していた神社で、東京の私立高校の生徒たちと地元の小学校の児童たちが祭りの舞を行ったという明るいニュースもあります。また、地元中学校では毎年行う文化祭で各地区の舞を練習し披露することで伝統を守ろうとする動きもあるようです。

こうした伝統ある祭りを何とか守っていこうとする取り組みが、厳しい山里の暮らしの中で息吹き、生活の一部である祭りが地域を活性化する核となってほしいものです。

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