長野県中小企業融資制度の「創業計画書」をモデルにしながら、事業計画書の書き方やお役立ち情報を紹介しているこのコラム。第2回目は「外部環境」です!
なぜ外部環境について説明を求められるの?
前回のコラムで説明した「開業動機」に続いて説明を求められるのが「外部環境」という項目です。上の表の赤枠内にカッコ書きで書いてあるように、この欄は業界動向や競合状況、立地環境などについて説明するスペースになります。
ビジネスを始めるにあたって、外部環境について説明を求められる理由は想像できると思います。市場(お客さん)の動向、地域の特性、同業他社との違いを把握しておくことはとても大切なことですし、経営者としてどのように捉えているのかを説明すればOKです。
むしろ問題は「どうやったら外部環境を調べられるのか」「個人のレベルでどのくらい調べる必要があるのか」「他の人はどうやって調べているのか」という点ですよね。今回のコラムでは書き方だけでなく着眼点や調べ方を中心にご紹介します。
まずは自分が始めるビジネスの「流れ」を把握しよう
飲食業、建設業、サービス業、製造業、旅館業など、業種業態によって外部環境についての説明の仕方は大きく異なります。たとえば、飲食店のようにお客さまが直接足を運ぶ機会の多いビジネスでは「立地」は重要な要素の1つと考えられるのが一般的ですが、建設業を始める方にとってはそこまで重要ではありません。一方で、建設業でもモデルルームを建てて販売促進する場合は立地も大切な要素になります。また、飲食業でも山の中の一軒家で大変人気のある店もあったりします。
つまり、外部環境について調べる際の第一歩として、自分が始めるビジネスの流れを把握しておくことが大切ということです。
ビジネスの流れとは、言い換えれば「どこから商品や材料を調達し、どのような人たちに(来てもらいたい人たちに)、どうやって販売するのか(依頼を受けるのか)、協力先や外注先はどこか」。
この「流れ」の違いによって、同じ業種でも調べておくべき内容はかなり変わってきます。自分が始めるビジネスと関わりの生じる方々が、どのようなことに影響を受けるのかについて思いをはせれば、調べる必要のある項目もおのずと見えてくるはずです。
お客さんにとって、本当の意味での「競合他社」を把握しよう
たとえばラーメン屋さんを創業する場合、飲食店が同業他社ということになりますが、
①時間をかけてゆっくり楽しむレストランは競合他社と言えるでしょうか?
②炊き立てごはんを入れてくれる弁当専門店は競合他社と言えるでしょうか?
直感でわかると思いますが、①は明らかに競合他社ではないですよね。反対に②は競合他社になりうる可能性が高そうです。その理由は「温かい食事を素早くお手頃な値段で提供してくれる」という意味において、お客さんにとって同じことを満たしてくれるためです。この場合、ラーメン屋さんは弁当専門店では提供できない魅力も求められることになりますね。
ただ日本標準産業分類上では、レストランはラーメン屋さんと同じ「飲食店」となる一方で、弁当店は「持ち帰り・配達飲食サービス業」という区分になっていて、中分類レベルで異なる業種と判断されています。
ビジネスの流れの話でも、ラーメン屋さんの話でも、お伝えしたかったのは「相手の目線に立って考える」ことの大切さであり、外部環境で必要な情報も、そうした着眼点で整理すると真に役立つ分析ができると思います。ぜひ1回、振り返ってみてください。
外部環境について調べるときのお役立ちツール
最後に、肝心のお役立ちツールについて紹介します!
① 業種別審査辞典(株式会社きんざい)
業界情報について、シンクタンクや金融機関などが調査した情報が、辞書のように編纂されている本。図書館に行くと閲覧することができます。どちらかというと金融機関の審査目線で書かれているのが特徴です。
② 市役所などの公的機関
役所を訪ねれば、地区単位の人口や年齢構成などがわかります。ホームページで公開されていることも多いです。飲食サービス業を始める場合は押さえておきたい情報ですね。
③ インターネット検索
当然ながら、インターネット検索も立派な外部環境分析の方法です。ただし情報元と、何年前のデータなのかについては注視しましょう。グラフなどを見たいときは「画像」で検索することも有効です。
④ e-Start
日本の統計が閲覧できる政府統計のポータルサイトです。業界動向などの確認に役立ちます。
⑤ 統計グラフ化ツール(グラレスタ)
工業品や鉱産物の生産量の推移といった情報収集に役立ちます。
⑥ 地域経済分析システム リーサス
https://resas.go.jp/#/13/13101
人口や産業構造といった地域経済を分析するときに役立つツールです。慣れるまで少し使い方にコツがいります。
個人的には、外部環境分析は経営者の「直感」も大切な判断材料だと思っています。その直感は様々な物事を見るなかで沸き上がったものでしょうし、他の人が気づいていない変化をいち早く捉えた結果という可能性もあるためです。
もちろん勘違いという可能性もありますし、事業計画書のように第三者に説明する時に直感ですと言っても納得してもらえないので、「なぜそう感じたのか」という観点から裏付けを探すようにしましょう。
今回は以上です。次回は「開業に必要な経験」と「強み」について、まとめて解説します。お楽しみに!
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