知ったからには行動したい。新聞と「知行合一」

こんにちは。ふくしま新聞店の“ふくたつ”です。

突然ですが、私のビジネスにおける座右の銘は「知行合一」です。この言葉は明代の中国の儒学者「王陽明」の思想です。この言葉をシンプルに訳すと、「自分が何か新しい知識を得たならば、それは必ず行動に移さなければならない。行動が無ければ、その知識を得たと言えない、知(知ること)と行(行うこと)は一緒である」という意味です。

これを新聞との関わりに置き換えると、こんなふうに考えられないでしょうか。

私たちは新聞から多くの知識や情報を得ます。新聞記事には地球の環境問題や、地域の社会課題も含まれています。しかし、新聞記事で社会課題を知ったとしても、私たち自身がその課題を解決するための行動を起こさなければ意味がない、と……。

そんな目線で新聞を見ていたとき、一つの話題が目に留まりました。

それは、「食品ロス」問題。

飲食店や家庭での食べ残しや、食品メーカーが抱える余分な商品、小売店の売れ残りなど、食べられるのに廃棄される食品を指す「食品ロス」、国連では持続可能な開発目標(SDGs)において、2030年までに世界全体で一人当たりの廃棄量を半減させることを目標に掲げています。

しかし、農林水産省の発表によると、2021年度の日本での食品ロス量は523万トンであり、食品製造業や小売り、外食などの事業者による食品ロスは279万トンに登るそうです。食品ロス問題は喫緊の課題であり、未だ解決の糸口が見えてこない難しい問題です。

そんな、地域にとっても重要な社会課題である「食品ロス」問題に、ビジネスの手法でアプローチを始めた新聞社があると知りました。それこそが、多くの長野県民が愛読する信濃毎日新聞を発行する、信濃毎日新聞社です。

同社では昨年から、地域の食品ロスを削減するスマートフォンアプリ「HELAS(ヘラス)」を活用したサービスを開始。これは、ロス食品の売り手であるお店と買い手である生活者を結びつけるマッチング・アプリです。私も個人的な興味から、早速「HELAS」アプリをダウンロードしてみました。ただ、なぜ新聞社がこのような新しいビジネスを始めたのでしょうか?とても気になるこの取り組みについて、信濃毎日新聞飯田支社にお伺いしてインタビューさせて頂きましたので、早速ご紹介いたします!

信濃毎日新聞社・戸田穣さんインタビュー「売る人も買う人もうれしいアプリをめざして」

信濃毎日新聞社の新たな取り組み、食品ロスを“減らす”を目的としたスマートフォンアプリ「HELAS(ヘラス)」。この取り組みについて、詳しくお聞きすべく、信濃毎日新聞社へうかがい、飯田支社の戸田穣さんにお話をお聞きしました。

信濃毎日新聞 飯田支社の戸田穣さん

━━まずHELASについて教えてください。

戸田穣さん(以下、戸田) HELASはその日に余ってしまいそうな食品や、賞味期限が迫った商品や型崩れ品など、食品ロスにつながりそうな食品を簡単に売買できる、スマートフォンアプリです。2023年7月にサービスを開始しました。

戸田 アプリユーザーは、リアルタイムで出品情報を受け取り、希望する商品をお得に購入できます。商品はお店で受け取ります。

たとえば、ホテルの朝食バイキングで余ったパンや、おかずの詰め合わせが出品されたりするので、その日のランチ用に購入することもできます。他にも、賞味期限が近づいた生そばや漬物を購入して会社帰りに受け取って、その日の夕食にしたりもできます。パンの耳や試作品など、普段店頭に並ばないような商品にも出会えるかもしれません。昨年12月からは規格外農産物の取り扱いも始まりました。

━━なぜHELASを始められたのですか?

戸田 信濃毎日新聞では、主業である日刊紙の発行だけではなく、新聞社が有するさまざまなリソースを活用しながら地域の社会課題解決に向けた新規事業を展開しています。HELASもその一環で、SDGsを考えた時に、新聞社としてできることを模索する中で生まれました。

━━もう少し詳しく教えて頂けますか?

戸田 新型コロナ禍における生活者の行動変化の中でも最も顕著な傾向のひとつに、買い控えが挙げられます。県内で、通信販売などの手法を持たない小規模店舗型の食品製造販売店、飲食店にとって、これは経営を圧迫しかねないリスクです。

それと同時に、食品が消費されずに売れ残ることによって、食品ロスが増加するといった負の影響が生じていました。これは昨今の食品原材料費の高騰も経営圧迫に拍車をかける一因ともなっています。

━━たしかに。食品メーカーとして在庫を作らなければいけない一方で、それが売れないとなれば経営が悪化すると同時に、たくさんの食品廃棄物が生まれてしまいます。

戸田 長野県における食品ロス削減問題については、県や市町村の自治体が県民への啓発活動を行っており、メディアによる周知や啓発も続けられています。しかし、食品ロスの削減を呼びかけているものの、現在まで具体的な施策があまり実施されてきませんでした。また、生活者にとってのメリットが見えづらいことなどから、食品ロス削減への取り組みは県民の自主性に委ねられている状態にありました。

━━確かに啓発活動だけでは限界があるのかもしれません。

戸田 そうですね。そこで弊社では、課題解決につながるきっかけづくりをと、食品ロスを「見える化」して削減するスマートフォンアプリ「HELAS」を開発しました。

「HELAS」は食品小売店等の売り手と生活者の双方がスマートフォンなどで簡単にアクセスでき、消費期限の近づいた余剰品や型崩れ品、不揃い品など、これまで廃棄に繋がっていた商品を安価かつ簡単に決済して売買できるBtoC型プラットフォームです。

食品ロス量全体の50%以上を占め、日本が2030年までに半減を目指す「事業系ロス食品」を売買に結びつける形で可視化することで、売り手、買い手の双方が得をしながら社会貢献に繋がる「三方よし」の事業を目指しています。

━━社会貢献ができて、売り手と買い手の双方にメリットがあるのは良いですね。

戸田 売り手(出品者)、買い手(アプリユーザー)ともに操作性が高くシンプルな仕様、特に売り手は接客等の傍らでの出品作業となるため、スマートフォンさえあれば商品写真と価格、説明文のみで簡単に登録かつ即座に出品される仕様に重点を置きました。

━━では、実際にHELASの使い方、登録方法を教えてください。

戸田 買い手側は、まずはHELASアプリをダウンロード。メールアドレスや居住市町村などを登録すればすぐに使えます。

━━ちなみに飯田下伊那地域の登録状況は?

戸田 アプリユーザーは全県で4000人以上、飯田下伊那地域では100人あまりの方にご登録いただいています。出店登録は全県で約80店あり、飯田市内では洋菓子店とイタリアンレストランにご出店いただいています。アプリユーザー、出店者ともに参加・利用いただける方を募集中です。

━━最後に、今後の展開について教えてください。

戸田 現在は消費者が商品を店舗まで取りに行くスタイルですが、4月からはヤマト運輸と連携して、規格外野菜の宅配を開始する予定です。色や形が規格に合わない農産品などを県内外に届けられるようになりますので、多くの出店農家さんのご参加をお待ちしています。

━━飯田市に住みながら県内の他地域の規格外野菜を宅配してもらえるのはうれしいですね。今後の展開に期待しています。戸田さん本日はありがとうございました!

以上、信濃毎日新聞飯田支社の戸田さんのインタビューでした。

私が戸田さんのお話をお聞きして感じたこと。それは、信濃毎日新聞が持つ報道機関としてのリソース──たとえば社会情勢に対する分析力や企業や個人に対する取材力など、新聞社ならではの知見もこの「HELAS」に生かされているという点でした。

ジャーナリズムを担う責任あるメディアとしての新聞社が、報道だけではなく社会課題の解決に向けてツールを提供すること。それは、「行動する新聞社」としてこれからの時代の新聞社の在り方として新しい潮流になるかもしれません。

最後に、信州には「あるをつくして」という言葉があります。これは宴会などで出された食事はもったいないから残さず最後まで食べようという意味。この地域には昔から食品ロスに対する意識が根付いているはずです。

ぜひ、皆様も南信州の「あるをつくして」信濃毎日新聞社の「HELAS」のアプリをダウンロードするところから始めてみてはいかがでしょうか。

アプリのダウンロード、出店のお問い合わせはこちらから

HELAS|地域密着型食品ロス削減アプリ


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