アクセス良い鼎のマンションの一室に。充実のマシンがずらり

━━はじめてお邪魔しましたが、飯田市の主要道路の一つ「アップルロード」からほど近い、アクセスの良い立地ですね。マンションの地下1室を使ったコンパクトなトレーニングルームながら、大型のマシンからダンベルなどの各種「小道具」まで、さまざまなものが揃っています。

仲山徹さん(以下、仲山) ありがとうございます。トレーニングには必ずしも器具が必要、というわけではないのですが、必要になった時に使えるものは不足なく揃えてあります。「ビジコン」の入賞起業奨励金で購入したものもあるんですよ。

「アプリスジム」室内のようす
ビジコン起業奨励金で購入したというトレーニング器

━━飯田市起業家ビジコンの起業奨励金が、日々のビジネスに役立っているんですね。そしていきなり失礼ですが・・・仲山さん、もちろん鍛え上げられた素晴らしいスタイルですが、ホームページで拝見したお写真の「ザ・選手!」という感じとはまた違った雰囲気ですね。日常なので、当然だとは思いますが。

仲山 あの、大会での写真ですよね。あのときは、それに向けて体を仕上げているので、たしかに印象がちがうかもしれません。

いまは、大会前ではないので食事も割と自由にしているのと、逆に体を大きくしようと考えている時期なんです。体脂肪も、大会前には5%程度にまで絞り込みますが、いまは15%くらいあると思います。

「アプリスジム」インスタグラムより
やわらかな物腰で語る、アプリスジム代表・仲山徹さん

━━なるほど、目的や目標に合わせて自在に体を変えていく日々なんですね。それができるって、やっぱりすごいことです。

仲山 日々、行っているトレーニングは変わらないんですが、食事が変わってくるんです。もちろん、ご希望の方にはそのような指導も行っています。

不調のある大人から、スポーツを極めたい小学生まで。世界基準の知識と経験で寄り添う

━━そもそもトレーニングをはじめたり、トレーナーになろうと考えたのは、いつごろですか?

仲山 きっかけとなったのは、大学時代です。野球、バレー、ボクシング・・・とさまざまなスポーツを経験してきましたが、同じ学部の友人があるとき、筋トレを始めたんですね。誘われて自分もやってみたら、ハマってしまって。

もともと大学も、トレーナーの勉強もできる学科だったので、趣味も学びもそちらの方向に進むようになり、入学当初は体育教師になろうと思っていたところ、そのままトレーナーとして就職することになりました。ちなみにその友人は、いま諏訪でジムを開業しているんです。

━━なんと、それはある種、運命的な流れですね。さらに大学卒業後は、さまざまなタイプのジムで経験を積まれたとか。

仲山 はい。最初に働いたのは都内に何十店舗もあるジムで、そこから独立したベンチャーのジムができたので、自分も移籍しました。その、2つ目の職場での経験がとにかく、いい時間になりましたね。ベンチャーなので、みんなでめちゃくちゃ働いて、体力的にはキツい時期ではありましたが、その分ビジネスの基本も学べましたし、濃厚な時間でした。若いときにあの経験ができて、よかったです。

スタッフとして柔道整復師、鍼灸師、按摩士、管理栄養士などさまざまなスペシャリストが集っていたので、研修として専門的な学びを得ることができましたし、なにより大きかったのは、そこでトレーナースクールという事業がスタートして、パーソナルトレーナーの世界基準となっているNSCAという資格も取得し、トレーナースクールの講師を務めたこと。これは自分にとって、大きな強みになっていると思います。

仲山さんはパーソナルトレーナーの国際基準といえる、NSCA(全米ストレングス&コンディショニング)免許を保有している

━━それは、どのような資格なんですか。

仲山 トレーナーの国際免許はいくつかに種類が分かれているんですが、これはパーソナルトレーナーとしての知識の確かさを証明できる資格です。世界各国、トレーナーの文化がある場所ならわりとどこでも、この資格を持っているといえば「ある程度知識があるな」と思ってもらえる、そんな存在です。

じつはアメリカだと、これを持っていないとパーソナルトレーナーはできないほど大切な資格。けれど、日本ではまだそんなに厳しくなく、名乗ればトレーナーになれてしまう、という実情もあります。

━━どのようなことを学んで、この資格を取得できるのでしょう。

仲山 ベースとなるテキストの内容は20章くらいにわたっていて、「血圧の高い人には」「妊婦さんには」「お年寄りには」など、あらゆる状態の人に寄り添ったトレーニングの方法を叩き込まれます。

━━体を鍛えるというと「元気な人がさらに元気になる」というイメージもありますが、本来パーソナルトレーナーは万全に健康でなくてもできるトレーニングを学ぶ必要がある、と。

仲山 はい。パーソナルなので、むしろ一人ひとりの完全ではない状態に合わせていく、そこが一番大事なポイントになるんです。たとえば女性ならホルモンのバランスもありますし、一人ひとり姿勢の違いによって筋肉の動きが絶対に違う。だから、たとえば同じスクワットでも、関節の硬さから見て適切なメニューを提案してあげられないと、鍛えようとしてかえって故障が出てしまうこともあるほど。体のどこにエラーがあるかを知っておかないと、パーソナルに寄り添ったメニューにならないんです。

あとは現在も、野球やサッカー、スイミングなど、スポーツが得意になりたい小学生のために、脳と体をつなげていくようなトレーニングも行っています。子どもたちは成長途中なので筋トレ中心、というメニューではなく、どう全身をつなげて出力していけるか、ということにフォーカスしたスイングやジャンプなど、「動き」をみるトレーニングを行ったりしますね。

━━なるほど、「つきっきりでトレーニングの様子を見て指導してもらえる」、ということだけではなく、そもそもどんなメニューを行ったらそれぞれの目標や困りごとに寄り添っていけるか、またそのメニューにもアレンジを加えながら伝えたり、導いていくのがパーソナルトレーナーの役割なんですね。

仲山 そうなんです。ものすごくマッチョになるとか劇的にダイエットをする、だけでなく、多様な目標や課題に合わせられるのが知識と経験であり、腕の見せどころだと思います。

「支えたい」と思える人がいるこの地域で開業したかった

━━もともと「いつかは飯田で開業を」と考えていたという仲山さんですが、人口規模などビジネスという面で考えるとここで事業を立ち上げることに不安はありませんでしたか。

仲山 そう、ですね・・・。じつは、あんまり考えていなかったです(笑)。自分がやってきた経験と資格で得た知識を活かして開業すれば、きっと大丈夫だろう、と思っていたので。

自分の出身は、飯田市中心地ではなく、山間地域の南信濃。けれど、このエリアは高校時代に兄と下宿をしていた思い入れのある場所で、なんとなく土地勘や雰囲気もわかっていたので「やっぱり自分で開業するならここ」で、という気持ちが強かったです。

━━さすがのポジティブさです! では実際開業をしてみて、東京との違いを感じることなどはありましたか。

仲山 悪い意味での違いはまずなくて、強いていえば『お客さまがとてもあたたかい』ですね。もちろん、東京でも素敵な出会いにたくさん恵まれましたが、東京のビジネスはどうしても忙しさに追われすぎたり、お客さまとの関係性もすごくビジネスライクというか、希薄になってしまうのが当たり前、という感覚。けれど飯田では、出会う方みなさん、情があるというか。こういう人たちのために自分もがんばりたいし、支えていきたい、と思える環境に恵まれています。

━━実際いまもう、すぐに予約が埋まるほど大人気ですものね。

仲山 おかげさまで、大きな広告をすることもなく、登録会員数は100名を超えて、新規のお客様は一時的に受け入れをストップしている状況です。ビジコンの入賞も、広告宣伝効果や信頼感という意味で、とてもありがたかったと感じています。

いまは、アプリスジムのトレーナー養成コースで学び、国際免許取得に向けてがんばっている後進のトレーナーを育成中。もう少ししたらまた、新たな方を受けられる準備が整うと思います。

━━では、これからの目標は。

仲山 いまは、まだ1店舗としてこの場所を充実させていけたらと思っていますが、たとえば店舗を増やすなら、もっと気軽にいつでも通えてフォローが手厚いジム、というのもできたらいいな、と最近は考え始めています。

この地域は車社会で、運動不足になりやすい人も多い。ただ人間は「動物」なので、何らか動いていたほうが、健やかでいられるんです。適切に運動することで不調を改善させ、「体を動かすって気持ちいいな」、と実感する人を増やす、それが健康寿命につながるーーそんなお手伝いをしていきたいですね。

━━最後に、いきなり個人的なことをお聞きしますが、じつは私いま、四十肩なのか五十肩なのか、肩から腕が痛くて・・・そんな人でもトレーニングできるのでしょうか。

仲山 できますよ、ちょっと見てみますので、立ってみてください。(遠くから姿勢を見る)

仲山 デスクワークが多い方に多いのですが、前傾の姿勢が続くとどうしても、「巻き肩」になってしまうんですよね。この状態になると上腕骨、つまり腕の骨と肩甲骨を繋いでいる筋肉が弱くなりやすくて、肩や腕の痛みにつながっていくことがあるんです。四十肩・五十肩のメカニズムは、じつはまだ正確には解明されていませんが、弱くなっている筋肉を鍛え、胸を上げる姿勢に戻していくことで痛みが改善することが多くあります。まずは背中の筋肉などから、鍛えるといいかもしれません。

━━なるほど・・・具体的に改善点を伝えていただけると、やる気が湧いてきます。最後までためになるお話を、ありがとうございました!

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